結論
人材開発支援助成金は、雇用する被保険者に職務に関連した訓練を受けさせた事業主に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です(令和8年度 パンフレット・支給要領 令和8年8月3日版で確認)。
- 中小企業の経費助成率は45〜100%(コース・雇用形態・賃金要件で異なる)。最大の100%は、有期契約労働者等を正社員化する有期実習型訓練で賃金要件を満たした場合
- 1事業所の年度の限度額は、人材育成支援コース1,000万円、人への投資促進コース2,500万円(成長分野等人材訓練を除く)、事業展開等リスキリング支援コース1億円
- OFF-JT(人材育成支援コース)は 実訓練時間10時間以上 が要件
- 職業訓練実施計画届 は 訓練開始日の6か月前から1か月前まで に労働局へ提出(後から出すことはできない)
- 支給申請は 訓練終了日の翌日から2か月以内
- 受講者の受講時間が 実訓練時間の8割以上 でないと支給されない
- eラーニング・通信制の訓練は賃金助成の対象外(経費助成のみ)
1. 人材開発支援助成金の基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省(都道府県労働局) |
| 対象 | 雇用保険の適用事業所で、雇用する被保険者に訓練を行う事業主 |
| 経費助成率 | 中小企業は45〜100%(大企業は30〜100%)。コース・雇用形態・賃金要件で異なり、多くの区分で賃金要件等を満たすと15%(有期実習型訓練は25%)を加算 |
| 賃金助成 | 1人1時間あたり400〜1,000円(コース・企業規模による。eラーニング・通信制は対象外) |
| 年度の支給限度額(1事業所) | 人材育成支援コース1,000万円/人への投資促進コース2,500万円(成長分野等人材訓練を除く。うち自発的職業能力開発訓練は300万円まで)/成長分野等人材訓練1,000万円/事業展開等リスキリング支援コース1億円/教育訓練休暇等付与コースは制度導入30万円 |
| 採択率 | 要件を満たせば支給(採択率という概念はなじまない) |
| 支給 | 訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請し、労働局の審査を経て支給決定(審査にかかる期間は公表されていない) |
2. コースと助成率・助成額(令和8年度)
令和8年度は、人材育成支援/教育訓練休暇等付与/人への投資促進/事業展開等リスキリング支援/建設労働者認定訓練/建設労働者技能実習/障害者職業能力開発 の7コースです。中小企業がよく使う4コースを整理します。
人材育成支援コース
職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練です。4つの訓練メニューがあります。
| 訓練メニュー | 経費助成率(中小企業) | 賃金要件等を満たす場合 | 大企業(賃金要件等) | OJT実施助成(1人1コース、中小企業) |
|---|---|---|---|---|
| 人材育成訓練(正規雇用労働者等) | 45% | 60% | 30%(45%) | — |
| 人材育成訓練(有期契約労働者等) | 70% | 85% | 70%(85%) | — |
| 認定実習併用職業訓練 | 45% | 60% | 30%(45%) | 20万円(賃金要件等で25万円) |
| 有期実習型訓練(正社員化した場合) | 75% | 100% | 75%(100%) | 10万円(同13万円) |
| 中高年齢者実習型訓練 | 60% | 75% | 45%(60%) | 10万円(同13万円) |
- 大企業のOJT実施助成は、認定実習併用職業訓練11万円(賃金要件等で14万円)、有期実習型訓練・中高年齢者実習型訓練9万円(同12万円)
- 賃金助成(1人1時間)は中小企業800円(賃金要件等で1,000円)、大企業400円(同500円)。上限は1人1訓練1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間)で、eラーニング・通信制は対象外
- 「賃金要件等」は、訓練修了後に賃金を5%以上上げた場合、または資格等手当を就業規則等に規定して支払い、賃金を3%以上上げた場合
- 人材育成訓練は実訓練時間10時間以上
- 経費助成の限度額(1人1訓練)は、実訓練時間10時間以上100時間未満で中小企業15万円(大企業10万円)、100時間以上200時間未満で30万円(20万円)、200時間以上で50万円(30万円)。標準学習時間の定めがないeラーニング・通信制は一律「10時間以上100時間未満」の区分
- 支給申請は1労働者1年度3回まで。有期実習型訓練は、同じ事業主が同じ労働者に対して1回まで
- 1事業所の年度の限度額は1,000万円
教育訓練休暇等付与コース
有給の教育訓練休暇制度などを新たに導入し、実際に取得させた場合の助成です。
- 教育訓練休暇制度: 30万円(賃金要件等を満たすと36万円)。制度導入日から3年間のうちに、企業全体の被保険者数が100人以上なら5人以上、100人未満なら1人以上の労働者に、それぞれ5日以上の有給の教育訓練休暇を付与して取得させることが要件。すでに無給の教育訓練休暇制度を導入している事業主は対象外
- 長期教育訓練休暇制度と教育訓練短時間勤務等制度は、令和8年度は人への投資促進コースの額(制度導入20万円など)で助成されます(下記の人への投資促進コースを参照)
人への投資促進コース
| 訓練区分 | 企業規模 | 賃金助成(1人1時間) | 経費助成率 |
|---|---|---|---|
| 高度デジタル人材訓練 | 中小企業 | 1,000円 | 75% |
| 高度デジタル人材訓練 | 大企業 | 500円 | 60% |
| 成長分野等人材訓練 | — | 1,000円 | 75% |
| 定額制訓練(サブスクリプション型) | 中小企業 | —(経費助成のみ) | 60%(賃金要件等で+15%) |
| 定額制訓練(サブスクリプション型) | 大企業 | —(経費助成のみ) | 45%(同+15%) |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 中小企業 | 800円(賃金要件等で1,000円) | 60%(同75%) |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 大企業 | 400円(同500円) | 45%(同60%) |
| 自発的職業能力開発訓練 | — | —(経費助成のみ) | 45%(同60%) |
- 成長分野等人材訓練の賃金助成は、国内の大学院を利用した場合
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練のOJT実施助成は1人1コース20万円(賃金要件等で25万円。大企業は11万円・14万円)
- 定額制訓練の経費助成の限度額は、1人1か月あたり2万円
- 長期教育訓練休暇制度: 所定労働日に合計30日以上(1日単位で10日以上連続する休暇を1回以上含む)の長期教育訓練休暇を付与した場合、制度導入20万円(賃金要件等で24万円)。有給休暇なら、賃金助成が1人1時間1,000円(大企業800円、賃金要件等で1,000円)で、中小企業は1人1,600時間・大企業は1,200時間まで
- 教育訓練短時間勤務等制度: 制度導入20万円(賃金要件等で24万円)
- 1事業所の年度の限度額は2,500万円(成長分野等人材訓練を除く。うち自発的職業能力開発訓練は300万円まで)。成長分野等人材訓練は別に1,000万円
事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等に伴うリスキリング訓練の助成です。
| 企業規模 | 賃金助成(1人1時間) | 経費助成率 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 1,000円 | 75% |
| 大企業 | 500円 | 60% |
- 令和8年度末までの時限措置
- 経費助成の限度額(1人1訓練)は、中小企業で実訓練時間10時間以上100時間未満30万円、100時間以上200時間未満40万円、200時間以上50万円(大企業は20万円・25万円・30万円)。eラーニング・通信制は中小企業15万円(大企業10万円)
- 設備投資加算: 事業展開促進機器等の導入費用(10万円以上)の50%。支給対象労働者1人につき15万円、10人以上なら人数にかかわらず150万円が限度
- 受講回数は1労働者1年度3回まで。うち令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づくeラーニングは1回まで
- 1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円
建設労働者認定訓練・建設労働者技能実習・障害者職業能力開発の各コース
建設業の事業主や、障害者の職業能力開発訓練を行う事業主向けの専用コースです。助成率・助成額は各コースのパンフレット・支給要領で確認してください(このページでは扱いません)。
3. 対象になる訓練・ならない訓練
| 訓練・経費 | 扱い | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 外部講師による座学(OFF-JT) | ◯ | 実訓練時間10時間以上 |
| eラーニング・通信制 | ◯(経費助成のみ) | 標準学習時間10時間以上、または標準学習期間1か月以上。賃金助成は対象外 |
| OJT | 一部の訓練のみ | 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練など |
| 社内の役職員が講師の研修 | △ | 経費助成の講師謝金は部外講師が対象で、事業主の役職員が講師となる場合は対象外 |
| 通常業務の中での指導 | ❌ | OFF-JTは、通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる訓練 |
| 経営者だけの研修 | ❌ | 対象は雇用する被保険者 |
| 業務と関係のない研修 | ❌ | 対象は職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練 |
| 所定労働時間外・休日の受講分 | 賃金助成の対象外 | → OFF-JT |
4. 申請の流れ
- 訓練コースごとに 職業訓練実施計画届 を作成し、訓練開始日の6か月前から1か月前まで に管轄労働局へ提出
- 計画どおりに訓練を実施し、受講時間と経費の支払を記録
- 訓練終了日の翌日から2か月以内 に支給申請
- 審査 → 支給決定 → 振込
計画届は「認定」を受ける手続きではなく、期限内に届け出ることが前提です。訓練開始日を後ろにずらす場合も、当初の計画届の提出日が変更後の訓練開始日の1か月前までになっている必要があります。
5. 落とし穴
落とし穴1: 計画届の提出期限を過ぎる
計画届の提出期間は、訓練開始日の6か月前から1か月前までです。研修の日程が決まったら、まず計画届の期限を逆算してください。
落とし穴2: 受講時間が8割に届かない
受講者の受講時間が実訓練時間の8割に満たないと支給されません(人材育成支援コース)。欠席・遅刻・早退の記録がそのまま判定に使われます。
落とし穴3: 実際の訓練時間が10時間を割る
計画届の時点だけでなく、支給申請の時点でも実訓練時間10時間以上が必要です。日程の短縮や中止で10時間を下回らないようにします。
落とし穴4: eラーニングで賃金助成を見込む
eラーニング・通信制の訓練は賃金助成の対象外です。経費助成だけで採算を考えてください。
落とし穴5: 社内講師の謝金を経費に入れる
経費助成の講師謝金は部外講師が対象で、事業主の役職員が講師となる場合の謝金は対象外です。
落とし穴6: 業務と研修の区別があいまい
OFF-JTは、通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行う訓練です。通常業務をしながらの指導は、認定を受けたOJT付き訓練などでなければ対象になりません。
落とし穴7: 100%の助成率を正社員化なしで見込む
経費助成率100%は、有期契約労働者等を対象にした有期実習型訓練で、正規雇用労働者等へ転換し、さらに賃金要件等を満たした場合の値です。転換しなければ有期実習型訓練は助成対象外で、同じ労働者に対しては1回までです。正社員向けの一般的な研修(人材育成訓練)は、中小企業で45%(賃金要件等で60%)が基準になります。
6. 申請を勧めるケース
- 雇用保険の適用事業所で、受講者が雇用する被保険者
- 研修開始の1か月以上前に、日程と内容を決められる
- 受講記録と経費の支払記録を残す体制がある
- 業務に直結する研修を、所定労働時間内に組める
7. 申請を勧めないケース
- 研修開始まで1か月を切っている
- 受講者の出席が読めない(受講時間が8割を割るおそれ)
- 経営者・役員だけの研修
- 業務と関係の薄い研修
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8. よくある質問
Q. 助成率は最大何%ですか?
A. 中小企業の経費助成率は45〜100%です。最大の100%は、有期契約労働者等を正社員化する有期実習型訓練(75%)で、訓練修了後の賃金要件等を満たして25%が加算された場合です。正規雇用労働者等向けの人材育成訓練は45%(賃金要件等で60%)、事業展開等リスキリング支援コースと高度デジタル人材訓練は75%です。
Q. OFF-JTは何時間以上必要ですか?
A. 人材育成支援コースでは、実訓練時間10時間以上です。eラーニング・通信制は、標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上が要件です。
Q. 自社の社員が講師をする研修も対象ですか?
A. 訓練としては対象になりえますが、経費助成の講師謝金は部外講師が対象で、事業主の役職員が講師となる場合の謝金は対象外です。
Q. eラーニングでも賃金助成は出ますか?
A. 出ません。eラーニング・通信制の訓練は賃金助成の対象外で、経費助成のみです。
Q. キャリアアップ助成金や業務改善助成金と併用できますか?
A. 雇用関係助成金どうしは、厚生労働省の併給調整表で組み合わせごとに可否が決まり、キャリアアップ助成金(正社員化コース)と人材育成支援コースは「併給可能」です。ただし同じ訓練経費を2つの助成金で重ねて受けることはできません(共通要領0304)。業務改善助成金は雇用関係助成金ではなく、同じ設備投資等の費用でなければ受けられますが、補助目的等が重なると併給調整の対象になる場合があります。→ 雇用関係助成金の併給ルール
Q. 計画届を出さずに訓練を始めてしまいました。
A. 計画届の提出期間は訓練開始日の6か月前から1か月前までなので、すでに始めた訓練は原則として対象になりません。次の訓練から期限内に提出してください。
9. 情報源
- 厚生労働省 人材開発支援助成金
- 人材育成支援コース 支給要領(令和8年8月3日版/PDF)
- 教育訓練休暇等付与コース 支給要領(令和8年8月3日版/PDF)
- 人への投資促進コース 支給要領(令和8年8月3日版/PDF)
- 事業展開等リスキリング支援コース 支給要領(令和8年8月3日版/PDF)
- 人材育成支援コース パンフレット(令和8年8月3日以降の計画届が対象/PDF)
- 人への投資促進コース パンフレット(令和8年8月3日現在/PDF)
- 事業展開等リスキリング支援コース パンフレット(令和8年8月3日現在/PDF)
- 都道府県労働局
最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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