業種解説

製造業で使える補助金完全ガイド|新事業進出・ものづくり/省力化/業務改善の使い分け

製造業の設備投資は、新製品の開発や新市場への進出なら新事業進出・ものづくり補助金、人手不足対策なら省力化投資補助金、最低賃金の引上げとセットなら業務改善助成金。枠の条件、賃上げ要件の返還リスク、納期の落とし穴を公募要領で解説。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

製造業の大型設備投資で検討するのは新事業進出・ものづくり補助金(上限750万〜7,000万円、賃上げ特例で最大9,000万円。第1回の応募申請は2026年9月30日〜10月30日)です。ただし新製品・新サービスの「開発」か、自社にとって新しい市場への進出が条件で、機械を導入するだけの事業は対象外です。人手不足を補う設備なら省力化投資補助金、事業場内最低賃金の引上げとセットなら業務改善助成金(助成率3/4〜4/5)。ものづくり補助金は23次締切が最後で、24次は告知されていません。

結論

製造業(小規模事業者は常時使用する従業員20人以下。中小企業は業種別の上限まで)で、2026年9月時点に検討できる主な補助金・助成金は次の3つです。

  • 新事業進出・ものづくり補助金(正式名称: 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金): 新製品・新サービスの開発や、新市場への進出に伴う設備投資。補助上限750万〜7,000万円(賃上げ特例で850万〜9,000万円)。第1回の応募申請は2026年9月30日〜10月30日18:00
  • 中小企業省力化投資補助金: 人手不足を補う省力化投資。カタログ注文型は最大1,000万円(大幅な賃上げで1,500万円)、一般型は最大8,000万円(大幅賃上げ特例で1億円)
  • 業務改善助成金: 事業場内最低賃金の引上げと、生産性向上の設備投資をセットで行う場合。助成上限30万〜600万円、助成率3/4〜4/5

注意したいのは、「機械を入れ替えて生産性を上げたい」だけでは新事業進出・ものづくり補助金の対象にならないことです。革新的新製品・サービス枠は新製品・新サービスの「開発」が対象で、機械装置を導入するだけで開発を伴わない事業は対象外と公募要領に明記されています。省力化が目的なら、省力化投資補助金のほうが制度の趣旨に合います。

ものづくり補助金について: ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は23次締切(応募締切2026年5月8日・採択発表2026年8月7日)が最後で、24次締切は告知されていません。新事業進出・ものづくり補助金の事務局は「異なる補助金」と明記しており、枠・要件・様式は別物です。過去の申請書は流用せず、新しい公募要領を読み直してください。

1. 製造業向け補助金の比較

制度 補助率・助成率 補助上限 主な要件 製造業での使いどころ
新事業進出・ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠) 1/2(小規模企業・小規模事業者、再生事業者は2/3) 750万〜2,500万円(賃上げ特例で850万〜3,500万円)・下限100万円 新製品・新サービスの開発 自社技術による新製品の開発
新事業進出・ものづくり補助金(新事業進出枠) 1/2 2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で3,000万〜9,000万円)・下限750万円 自社にとって新しい製品等と新しい市場 既存事業と異なる市場への進出
新事業進出・ものづくり補助金(グローバル枠) 2/3 2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で3,000万〜9,000万円)・下限750万円 自発的な海外販路開拓に向けた国内の輸出体制強化 輸出に向けた生産体制づくり
省力化投資補助金(カタログ注文型) 1/2以下 従業員数別500万〜1,000万円(大幅な賃上げで750万〜1,500万円) 登録製品を販売事業者と共同で申請 協働ロボット・AGV/AMRなどの登録製品
省力化投資補助金(一般型) 中小企業1/2・小規模事業者2/3(中小企業も特例で2/3) 従業員数別750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例で1,000万円〜1億円) 単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1つ以上導入 カタログにないオーダーメイドの省力化設備
業務改善助成金 3/4〜4/5 30万〜600万円 事業場内最低賃金の引上げ+設備投資 最低賃金に近い賃金の従業員がいる工場
持続化補助金 2/3(賃金引上げ特例を使う赤字事業者は3/4) 50万円(特例で最大250万円) 小規模事業者(製造業は20人以下) 小さな工場の販路開拓

2. 新事業進出・ものづくり補助金を使えるケース

製造業の設備投資で上限額が大きいのはこの補助金ですが、枠は投資額ではなく「何をするか」で決まります

枠ごとの対象

  • 革新的新製品・サービス枠: 自社の技術で新しい製品・サービスを開発する事業。既存の製品・サービスの生産プロセスの改善だけの事業や、機械装置を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わない事業は対象外
  • 新事業進出枠: 製品等が自社にとって新規で、かつ、その市場も自社にとって新しい事業。既存製品の増産、過去に作っていた製品の再製造、単なる製法変更、既存市場の一部だけを対象にするもの、商圏違いだけのものは該当しません
  • グローバル枠: 自発的に海外販路を開拓するための、国内の輸出体制の強化。取引先主導の事業は対象外

対象経費

機械装置・システム構築費(必須)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費です。新事業進出枠・グローバル枠では建物費も対象になり、「機械装置・システム構築費または建物費のいずれか」を必ず含めます。

基本要件(3〜5年の事業計画・公募要領 1.2版)

  • 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率+4.0%以上
  • 一人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上
  • 事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上高い水準で毎年維持
  • 一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」で公表(掲載まで1〜2週間程度かかります)
  • 子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組みを、3つの選択肢から1つ選んで事業計画に記載
  • 金融機関から資金提供を受けて実施する場合は、金融機関による確認書

応募申請時点で従業員が0名の事業者は対象外です。

加点と減点

加点項目は17項目(パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、健康経営優良法人2026、経営革新計画の承認、(連携)事業継続力強化計画、DX認定、研究開発費・試験研究費の計上、技術情報管理認証制度、成長加速マッチングサービス、アトツギ甲子園など)です。いずれも申請締切日時点で満たしている必要があります

一方で、過去3年間にものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を受けている事業者は減点されます。

第1回は採択発表前(2027年1月予定)のため、採択率の実績はまだありません。

新事業進出・ものづくり補助金の詳細申請判定ガイド

3. 省力化投資補助金の活用

人手不足を補う設備なら、まず省力化投資補助金を検討します。

カタログ注文型

事務局に登録された製品を選び、販売事業者と共同で交付申請します。随時受付です。製造業向けのカテゴリには協働ロボット、自動検査装置、自動搬送(AGV/AMR)などがありますが、対象は登録製品だけなので、公式の製品カタログで型番まで確認してください。

対象経費は製品本体価格(購入する場合は単価50万円以上)と導入経費(製品本体価格の2割まで)だけです。中古品や交付決定前に購入した製品は対象外です。

一般型(オーダーメイド型)

カタログにない、自社の現場に合わせた設備・システムが対象です。事業計画が必要で、労働生産性の年平均成長率+4.0%以上、一人当たり給与支給総額+3.5%以上などの要件があります。第8回の申請受付は2026年9月18日10:00〜10月16日17:00です。

一般型の採択率は、公式の申請数・採択数から算出すると第1〜6回で60.9〜69.3%です(直近の第6回は1,841件中1,176件=63.9%)。

省力化投資補助金の詳細

4. 業務改善助成金の活用

事業場内最低賃金が地域別最低賃金に近い従業員がいる工場で使える助成金です。

  • 助成率: 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4
  • 助成上限: 50円・70円・90円の引上げ額コース、引き上げる労働者数、事業場の規模(30人未満かどうか)で決まり、最大600万円(10人以上の区分を使えるのは特例事業者のみ)
  • 令和8年度の申請期限は「都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日」と「11月30日」の早い方です。発効日が10月1日の県は9月30日が期限になります
  • 賃金の引上げは申請より後に行い、引上げ後6か月以上の維持が必要です

業務改善助成金の詳細

5. 製造業特有の落とし穴

落とし穴1: 特注設備の納期が実施期間に収まらない

交付決定前の発注・契約・支払いは対象外です。新事業進出・ものづくり補助金の補助事業実施期間は、革新的新製品・サービス枠が交付決定日から10か月以内、新事業進出枠・グローバル枠が14か月以内です(省力化投資補助金の一般型は17か月以内)。この期間内に納品・検収・支払いまで終える必要があるため、納期の長い特注設備は、申請前にメーカーへ納期を確認してください。

落とし穴2: 「機械を入れるだけ」の計画で申請する

新事業進出・ものづくり補助金の革新的新製品・サービス枠は、生産プロセスの改善だけの事業や、機械装置の導入だけで新製品・新サービスの開発を伴わない事業を対象外としています。設備で何を開発するのかを、計画の中心に置く必要があります。

落とし穴3: 中古機械の扱いは制度で違う

省力化投資補助金のカタログ注文型は、中古品が対象外です。持続化補助金は中古品も対象になりえますが、金額にかかわらず2者以上の見積りが必要です。新事業進出・ものづくり補助金で中古設備を検討する場合は、公募要領の対象経費の規定を確認してください。

落とし穴4: 相見積もりの条件を満たせない

新事業進出・ものづくり補助金では、発注先1件あたり50万円(税抜)以上の契約に3者以上の相見積もりが必要です。金融機関確認書を発行した金融機関や、事業計画の作成支援者への発注・見積もりは認められません。特注設備で見積先が限られる場合は、早めに準備してください。

落とし穴5: 自社の人件費は対象経費にない

新事業進出・ものづくり補助金の対象経費に、自社の人件費はありません。設備の組立・据付を自社の従業員で行っても、その人件費は補助されません。

落とし穴6: 賃上げ要件の返還リスク

新事業進出・ものづくり補助金では、一人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上と、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準を、3〜5年の事業計画期間にわたって満たす必要があります。給与の目標は交付申請時までに従業員へ表明し、表明がなければ全額返還、目標未達なら未達率に応じた返還です。事業場内最低賃金は、未達の年ごとに「補助金交付額÷計画年数」を返還します。

落とし穴7: 交付決定額の減額で下限を割る

交付申請の精査で交付決定額が減額され、補助下限額(革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠・グローバル枠750万円)を下回ると採択取消になります。ぎりぎりの事業費で組まないことが大切です。

落とし穴8: 加点・特例には証憑が要る

加点や特例は「該当する」と書けば通るものではなく、申請締切日時点で要件を満たしていることを示す書類の添付が必要です(経営革新計画の承認書、賃金台帳、所定の様式など)。認定に数か月かかるものもあるため、締切間際に思い立っても間に合いません。

6. 製造業の制度選び方

やりたいことで選ぶ

やりたいこと 候補になる制度
自社技術で新製品を開発し、そのための設備を入れる 新事業進出・ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
既存事業と違う市場に、自社にとって新しい製品で進出する 新事業進出・ものづくり補助金(新事業進出枠)
輸出に向けて国内の生産体制を強化する 新事業進出・ものづくり補助金(グローバル枠)
人手不足を登録製品で補う 省力化投資補助金(カタログ注文型)
カタログにない省力化設備を入れる 省力化投資補助金(一般型)
最低賃金に近い賃金を上げ、あわせて設備を入れる 業務改善助成金
従業員20人以下で販路開拓に取り組む 持続化補助金

事業規模の目安

  • 新事業進出・ものづくり補助金の補助下限は、革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠・グローバル枠750万円です。補助率1/2なら、事業費は革新的新製品・サービス枠で200万円以上、新事業進出枠で1,500万円以上が最低ラインです
  • 持続化補助金の補助上限は50万円(特例で最大250万円)で、小規模な投資向けです

受付時期で選ぶ(2026年9月14日時点)

制度 直近の受付
業務改善助成金 令和8年度は受付中。期限は都道府県ごとに異なり、地域別最低賃金の発効日が10月1日の県は9月30日
省力化投資補助金(カタログ注文型) 随時受付
省力化投資補助金(一般型) 第8回 2026年9月18日〜10月16日17:00
新事業進出・ものづくり補助金 第1回 2026年9月30日〜10月30日18:00(採択発表は2027年1月予定)
持続化補助金 第20回 2026年11月5日〜12月15日17:00

どの制度も、交付決定前に発注した経費は対象外です。1〜2か月以内にどうしても設備が必要なら、補助金を前提にせず、自己資金や融資で進めるほうが現実的です。

7. 事業計画書で押さえるポイント

ポイント1: 新しさを具体的に示す

「何が自社にとって新しい製品・サービスなのか」「どの市場が自社にとって新しいのか」を、既存事業との違いがわかる形で書きます。

ポイント2: 数値目標を置く

  • 加工時間: 現状○分 → 改善後△分(×%短縮)
  • 不良率: 現状○% → 改善後△%
  • 付加価値額・一人当たり給与支給総額: 基本要件(+4.0%/+3.5%)を満たす計画

ポイント3: 取引先・販路を明示する

「新規市場を開拓する」だけでなく、想定する顧客・販路と、その根拠を書きます。

ポイント4: 計画は自社で作る

新事業進出・ものづくり補助金では、認定経営革新等支援機関の関与は任意です。外部の助言は受けられますが、事業計画書の作成そのものを第三者に行わせることは認められず、発覚すると不採択・採択取消・交付決定取消になります。

8. 申請を勧めるケース

  • 中小企業者の要件に当てはまる(中小企業基本法では、製造業は資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下。補助金ごとの定義は公募要領で確認)
  • 新製品・新サービスの開発、または自社にとって新しい市場への進出の計画がある
  • 3〜5年、給与を年平均+3.5%以上上げ続ける見通しがある
  • 事業費の全額をいったん自己資金やつなぎ融資で立て替えられる
  • 採択後の交付申請・実績報告・事業化状況報告に対応できる

9. 申請を勧めないケース

  • 1〜2か月以内に設備が必要
  • 目的が既存設備の更新・増産だけ(→省力化投資補助金などを検討)
  • 事業費が小さく、減額されると補助下限額を割るおそれがある
  • 立替えの資金を用意できない
  • 過去3年以内にものづくり補助金・新事業進出補助金で交付決定を受けている(減点対象)

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10. よくある質問

Q. ものづくり補助金はもう申請できませんか?

A. 2026年9月14日時点で、応募を受け付けている回はありません。23次締切(採択発表2026年8月7日)が最後で、24次締切は告知されていません。現在申請できるのは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金ですが、事務局は「異なる補助金」と明記しており、要件・様式は別物です。

Q. 機械の入れ替えだけでも新事業進出・ものづくり補助金を使えますか?

A. 革新的新製品・サービス枠では、生産プロセスの改善だけの事業や、機械装置の導入だけで新製品・新サービスの開発を伴わない事業は対象外です。人手不足を補うのが目的なら、省力化投資補助金を検討してください。

Q. 認定経営革新等支援機関の確認書は必要ですか?

A. 新事業進出・ものづくり補助金では任意です。ただし、金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は、金融機関による確認書が必要です。

Q. 採択率はどのくらいですか?

A. 新事業進出・ものづくり補助金は第1回のため、実績がありません(採択発表は2027年1月予定)。省力化投資補助金の一般型は、公式の申請数・採択数から算出すると第1〜6回で60.9〜69.3%です(第6回は63.9%)。

11. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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