業種解説

小売業で使える補助金|店舗改装・EC・POS・セルフレジの制度選びと仕入れの扱い

小売業の補助金を、店舗改装・看板・ECサイト・POSと在庫管理・セルフレジ・電子棚札など投資内容別に整理。販売する商品の仕入れや、既存設備の単なる取替えが対象外になる点、フランチャイズ本部との取引の扱いを公募要領で解説。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

小売業の補助金は投資内容で分かれます。店舗改装・看板・ECサイトなど販路開拓の取組は持続化補助金(常時使用する従業員5人以下)、POSレジ・在庫管理などのソフトウェアはデジタル化・AI導入補助金(登録ITツールのみ)、セルフレジ・自動精算機・電子棚札などは省力化投資補助金のカタログ注文型(登録製品のみ)が候補です。販売している商品の仕入れは、持続化補助金では「通常の事業活動に係る経費」として対象外です。フランチャイズ本部との取引も持続化補助金では対象外なので、加盟店は注意してください。

結論

小売業の補助金は、何に投資するかで使う制度が分かれます(2026年9月15日時点の公募要領で確認)。

  • 店舗改装・看板・チラシ・ECサイト(販路開拓): 持続化補助金。小売業は常時使用する従業員5人以下が対象
  • POSレジ・在庫管理・顧客管理のソフトウェア: デジタル化・AI導入補助金。事務局に登録されたITツールだけが対象
  • セルフレジ・自動精算機・電子棚札など: 省力化投資補助金のカタログ注文型。登録製品だけが対象
  • 最低賃金に近い賃金の引上げとPOSレジなどの導入をセットで行う: 業務改善助成金

注意したいのは、販売している商品の仕入れは補助の対象にならないことです。持続化補助金の公募要領は「販売している商品の仕入」を通常の事業活動に係る経費として対象外にしています。在庫を増やす資金は、補助金ではなく運転資金として考えてください。

1. 投資内容別に使える制度

投資内容 候補になる制度 小売業での注意点
店舗改装・バリアフリー化工事 持続化補助金(委託・外注費) 販路開拓や業務効率化につながる工事が対象。50万円(税抜)以上の外注工事は処分制限財産になることがある
看板・チラシ・ネット広告 持続化補助金(広報費) 補助金額30万円(税込)まで・広報費だけでは申請不可
ショーケースなどの設備 持続化補助金(機械装置等費) 老朽化した設備の単なる取替えは対象外
ECサイトの作成・更新 持続化補助金(ウェブサイト関連費) 補助金額30万円(税込)まで・単独申請不可
POSレジ・在庫管理・顧客管理のソフトウェア デジタル化・AI導入補助金(通常枠) 登録ITツールのみ。クラウド利用料は最大2年分
レジ本体・タブレット(インボイス対応) デジタル化・AI導入補助金(インボイス対応類型) レジ・券売機等は20万円まで、PC・タブレット等は10万円まで、補助率1/2以内
セルフレジ・自動精算機・電子棚札 省力化投資補助金(カタログ注文型) 登録製品のみ。対面型(一体型)のセミセルフレジは対象外
バックヤードの搬送・検品・保管 省力化投資補助金(カタログ注文型・一般型) 無人搬送車(AGV・AMR)、検品・仕分システム、自動倉庫などのカテゴリがある
賃上げ+POSレジなどの導入 業務改善助成金 事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが前提
販売する商品の仕入れ 対象になる制度なし 持続化補助金は通常の事業活動に係る経費として対象外

2. 小売業の規模の基準

区分 小売業の基準 根拠
小規模事業者(持続化補助金の対象) 常時使用する従業員5人以下 持続化補助金 第20回 公募要領(商業・サービス業の基準)
中小企業者 資本金5,000万円以下または常時使用する従業員50人以下 中小企業基本法第2条第1項

中小企業者は、資本金と従業員数のどちらか一方を満たせば当てはまります。ただし、補助金ごとに対象者の定義を公募要領で定めているので、申請する制度の公募要領で確認してください。

3. 店舗の改装・販促で持続化補助金を使うときの注意点

持続化補助金の対象経費の全体像は販路開拓で使える補助金で整理しています。ここでは、小売店で迷いやすい点を第20回の公募要領から抜き出します。

対象になる例

  • 委託・外注費: 店舗改装・バリアフリー化工事、利用客向けトイレの改装工事
  • 広報費: 看板の作成・設置、チラシ・カタログの外注や発送、商品の宣伝広告が載っている販促品
  • 機械装置等費: 衛生向上や省スペース化のためのショーケース、高齢者・乳幼児連れ家族の集客力向上のための椅子・ベビーチェア

対象外になる例

  • 販売している商品の仕入れ、老朽化した既存機械の取替え費用
  • 金券・商品券、配布しなかったチラシ
  • フランチャイズ本部が作る広告物の購入
  • 単なる店舗移転を目的とした旧店舗・新店舗の解体・建設工事、住宅兼店舗の住宅部分の改装
  • パソコン・タブレット端末・事務用プリンターなど汎用性が高いもの
  • 消耗品(段ボール、梱包材など)

店舗の家賃

事務所等の家賃は原則として対象外です。ただし、既存の店舗の賃料ではなく、新たな販路開拓の取組の一環として新たに賃借する場合は、対象となる場合があります(審査時に床面積の按分資料が必要)。

4. ECサイトを作る場合

持続化補助金の「ウェブサイト関連費」は、販路開拓等を行うためのウェブサイトやECサイトの開発・構築・更新・運用の経費が対象です。補助金額は30万円(税込)までで、ウェブサイト関連費だけでは申請できません。販売を目的としたシステムやソフトウェアの開発は対象外です。

デジタル化・AI導入補助金は、サイトの制作費ではなく、事務局に登録されたITツールの導入費用が対象です。公募要領は、予約機能について、顧客側の画面を新たに制作する費用はスクラッチ開発に当たり対象外としています。

→ 詳しくはECサイト構築で使える補助金

5. POSレジ・在庫管理でデジタル化・AI導入補助金を使う

通常枠のソフトウェアは、公募要領の業務プロセスを1つ以上持つ必要があります。小売業に関係する主な例は次のとおりです。

業務プロセス 公募要領に挙がっている機能の例
決済・債権債務・資金回収 決済(POSレジ、券売機システム、多通貨対応)、発注・仕入管理、受注・売上請求管理
供給・在庫・物流 ロケーション管理、入出庫管理、実地棚卸管理、検品受入、在庫分析、納品管理
顧客対応・販売支援 CRM(顧客購買履歴・販促・アフターケア)、SFA
  • 持続化補助金でPOSソフトを計上する場合は、補助事業計画の「業務効率化(生産性向上)の取組内容」に記載した場合に限られます
  • レジ本体やタブレットを買うなら、デジタル化・AI導入補助金のインボイス対応類型(レジ・券売機等20万円まで、PC・タブレット等10万円まで、補助率1/2以内)を検討します
  • 使いたいサービスが登録されているかは、公式の「ITツール検索」で確認してください

6. セルフレジ・電子棚札で省力化投資補助金を使う

省力化投資補助金のカタログ注文型は、事務局の製品カタログに登録された製品を、販売事業者と共同で申請する類型です(随時受付)。製品カテゴリ(2026年9月10日版)のうち、対象業種に小売業が含まれる主なものは次のとおりです。

  • 店舗・施設向けセルフ対応型機器: 自動精算機(フルセルフレジ、分離型のセミセルフレジ。対面型(一体型)のセミセルフレジは対象外)
  • 電子棚札システム
  • 清掃ロボット、飲料補充ロボット
  • バックヤード・物流: 無人搬送車(AGV・AMR)、検品・仕分システム、自動倉庫、ピッキングカートシステム

対象経費は製品本体価格と導入経費(製品本体価格の2割まで)だけで、補助事業の終了後3年間の効果報告があります。カタログにない設備を導入する場合は一般型(第8回の申請受付は2026年9月18日〜10月16日17:00)が対象です。

省力化投資補助金の詳細

7. 賃上げとあわせるなら業務改善助成金

事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資等を行った場合に、費用の一部が助成されます。令和8年度のリーフレットは、機器・設備の導入の例に「POSレジシステム導入による在庫管理の短縮」を挙げています。

  • 助成率: 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4
  • 上限: 最大600万円(引上げ額・人数などで決まる)
  • 申請期限: 地域別最低賃金の発効日の前日と11月30日のいずれか早い日まで

業務改善助成金の詳細

8. 小売業特有の落とし穴

落とし穴1: 仕入れ資金を補助金で賄おうとする

持続化補助金は「販売している商品の仕入」を対象外にしています。デジタル化・AI導入補助金や省力化投資補助金の対象経費にも、販売する商品の仕入れという区分はありません。

落とし穴2: フランチャイズ本部との取引

持続化補助金では、自社内部やフランチャイズチェーン本部との取引によるものは対象外です。フランチャイズチェーン指定の機器等を本部以外から購入する場合も含まれます。

落とし穴3: 古いレジや什器を同じものに替えるだけ

持続化補助金は、老朽化した既存機械の取替え費用や、新たな販路開拓につながらない単なる取替え更新を対象外にしています。何のための入替えかを、販路開拓や業務効率化の計画として示す必要があります。

落とし穴4: 決済手数料まで補助されると考える

持続化補助金は、インターネットショッピング決済手数料等を対象外にしています。デジタル化・AI導入補助金の対象経費にも、決済のたびにかかる手数料の区分はありません。

落とし穴5: 交付決定前に発注・契約する

持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金のいずれも、交付決定前に発注・契約したものは対象外です。セールや繁忙期に合わせたい場合は、交付決定の時期から逆算してください。

9. 申請を勧めるケース

  • 新しい客層に向けた販促や、業務効率化の計画を数字で説明できる
  • 使いたいソフトウェアや製品が、登録ITツール・登録製品にある
  • 交付決定まで発注・契約を待てる
  • 導入費用をいったん全額立て替えられる

10. 申請を勧めないケース

  • 商品の仕入れ資金に充てたい
  • 既存のレジや什器を同じものに替えるだけ
  • フランチャイズ本部から購入する機器を補助の対象にしたい(持続化補助金)
  • 1〜2か月以内に導入を終えたい
  • 採択後の実績報告や効果報告に対応する体制がない

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11. よくある質問

Q. 商品の仕入れに補助金は使えますか?

A. 使えません。持続化補助金の公募要領は「販売している商品の仕入」を通常の事業活動に係る経費として対象外にしています。

Q. セルフレジは補助の対象になりますか?

A. 省力化投資補助金のカタログ注文型で、登録製品であれば対象になりえます。製品カテゴリでは、フルセルフレジと分離型のセミセルフレジが対象で、対面型(一体型)のセミセルフレジは対象外とされています。

Q. レジやタブレットを持続化補助金で買えますか?

A. パソコン・タブレット端末など汎用性が高いものは対象外です。インボイス対応に必要なレジ・タブレットなら、デジタル化・AI導入補助金のインボイス対応類型(レジ・券売機等20万円まで、PC・タブレット等10万円まで、補助率1/2以内)を検討してください。

Q. フランチャイズ加盟店でも持続化補助金を使えますか?

A. 申請自体は要件を満たせば可能ですが、フランチャイズチェーン本部との取引や、本部が作る広告物の購入は対象外です。本部指定の機器を本部以外から買う場合も対象外になります。

Q. 在庫管理のクラウドサービスは対象ですか?

A. 事務局に登録されたITツールで、供給・在庫・物流などの業務プロセスを持つものなら、デジタル化・AI導入補助金の対象になりえます。クラウド利用料は最大2年分が対象です。

12. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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