補助金は課税対象?圧縮記帳と消費税の取扱いを法令・通達で整理

補助金は原則として法人税・所得税の課税対象です。固定資産の取得・改良に充てた国庫補助金等は圧縮記帳(法人税法42条・43条)の対象になりえます。消費税は不課税ですが、持続化補助金や業務改善助成金では消費税等仕入控除税額の減額・返還のルールがあります。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

補助金は原則として法人税・所得税の課税対象です。収益に計上する時期の書き方は公募要領で異なり、持続化補助金 第20回は「補助金の額の確定を受けた事業年度」の収益、新事業進出・ものづくり補助金 第1回と省力化投資補助金 一般型 第8回は「支払を受けた事業年度」の収入として計上するとしています。固定資産の取得・改良に充てた国庫補助金等は、要件を満たせば圧縮記帳(法人税法第42条など)で課税を後の年度に繰り延べられます。補助金そのものは消費税の不課税取引ですが、持続化補助金や業務改善助成金では消費税等仕入控除税額の減額・報告・返還が求められます。個別の処理は税理士に確認してください。

結論

補助金・助成金は、原則として 法人税・所得税の課税対象 です。たとえば持続化補助金 第20回の公募要領は、補助金は経理上「補助金の額の確定を受けた事業年度における収益」として計上し、法人税・所得税の課税対象になると明記しています。新事業進出・ものづくり補助金 第1回と省力化投資補助金 一般型 第8回の公募要領は、「支払を受けた事業年度における収入」として計上し、法人税等の課税対象になるとしています。

押さえておきたいのは次の3点です。

  1. 補助金で払った経費は、通常どおり損金(個人は必要経費)になります。補助金額に税率を掛けた額が、そのまま追加の税金になるわけではありません。税負担が増えやすいのは、経費を払った年度と補助金を収益に計上する年度がずれる場合や、補助金で固定資産を買った場合です
  2. 固定資産の取得・改良に充てた補助金は、要件を満たせば圧縮記帳(法人税法第42条・第43条。個人は所得税法第42条・第43条)で課税を後の年度に繰り延べられます
  3. 補助金そのものは消費税の不課税取引です(消費税法基本通達5-2-15)。ただし持続化補助金や業務改善助成金には、消費税等仕入控除税額を補助対象から減額する、または確定後に報告・返還するルールがあります

具体的な税務処理は、必ず税理士に確認してください。

1. 法人税・所得税の扱い

法人: 益金に算入

法人税法第22条第2項は、資本等取引以外の取引に係る収益の額を益金の額に算入すると定めています。返済不要の補助金はこの収益として益金に算入されるのが原則で、補助金で支払った経費は同条第3項により損金の額に算入されます。決算書でどの勘定科目にするかは会計処理の問題なので、顧問税理士と決めてください。

個人事業主: 所得税の課税対象

補助金は所得税の課税対象です(持続化補助金 第20回 公募要領)。どの所得区分の収入にするかや確定申告書への書き方は、税理士または税務署に確認してください。

雇用関係の助成金も課税対象

「助成金は税金がかからない」は誤解です。国税庁の法人税基本通達2-1-42は、休業手当・賃金・職業訓練費などの経費を補塡するために雇用保険法などに基づいて交付を受ける給付金等について、益金の額に算入する事業年度を定めています(→「3. 収益に計上する時期」)。

2. 課税のタイミングがずれる例

仮の数字で、補助事業の経費300万円を1年目に支払い、補助金200万円の額の確定が2年目になった場合です(持続化補助金のように「額の確定を受けた事業年度」に収益計上するとき)。

1年目 2年目
補助事業の経費(損金) 300万円
補助金収入(益金) 200万円
所得への影響 300万円減る 200万円増える

1年目は所得が減りますが、2年目は補助金の分だけ所得が増えます。入金された補助金を運転資金に回し切ると、2年目の納税資金が足りなくなることがあります。額の確定や入金がどの事業年度になりそうかを、早めに税理士と共有してください。

3. 収益に計上する時期

公募要領や通達の書き方は、制度によって違います。公式の資料で確認できる例は次のとおりです。

補助金・助成金 計上する事業年度 根拠
持続化補助金(第20回) 補助金の額の確定を受けた事業年度 公募要領
新事業進出・ものづくり補助金(第1回)、省力化投資補助金(一般型 第8回) 支払を受けた事業年度 公募要領
休業手当・賃金・職業訓練費などの経費を補塡するために、雇用保険法などに基づいて交付を受ける給付金等 休業・就業・職業訓練などの事実があった日の属する事業年度(その時点で金額が確定していなくても見積もって計上) 法人税基本通達2-1-42
定年の延長、高齢者・障害者の雇用など、雇用の改善を図ったことで交付を受ける奨励金等 支給決定があった日の属する事業年度 同通達の(注)
上記以外の補助金 公募要領・交付規程に記載があるか確認 税理士に確認

公募要領の書き方が「額の確定を受けた事業年度」と「支払を受けた事業年度」で分かれているため、実際にどの事業年度に計上するかは、額の確定の通知や入金の日付と合わせて税理士に確認してください。キャリアアップ助成金など個別の助成金が通達の本文と(注)のどちらに当たるかも、税理士に確認してください。

4. 圧縮記帳

法人税法第42条の要件

法人が「固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金」など(国庫補助金等)の交付を受けた場合、次の要件を満たすと、帳簿価額を減額した金額を損金に算入できます。

  • 固定資産の取得・改良に充てるための補助金である(国・地方公共団体の補助金・給付金のほか、法人税法施行令第79条に列挙された一部の法人の助成金等も含む)
  • 補助金の返還を要しないことが、その事業年度終了の時までに確定している
  • その事業年度終了の時までに、交付の目的に適合した固定資産を取得・改良している
  • 圧縮限度額(原則として補助金の額)の範囲内で、帳簿価額を損金経理で減額するか、確定した決算で積立金として経理する
  • 確定申告書に損金算入に関する明細を記載する(第42条第3項)

国税庁の法人税基本通達10-2-1は、「交付の条件に違反した場合には返還しなければならない」といった一般的な条件が付いていても、返還不要が確定しているかの判定には関係しないとしています。また、補助金適正化法第15条による額の確定の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定したものに当たるとしています。

事業年度末までに返還不要が確定していない場合

返還不要がその事業年度終了の時までに確定していない場合は、補助金の額以下の金額を特別勘定として経理して損金に算入し、返還の要否が確定したときに取り崩す仕組みがあります(法人税法第43条)。

個人事業主の場合

所得税法第42条は、固定資産の取得・改良に充てるための国庫補助金等で、その年の12月31日までに返還不要が確定し、目的に合った固定資産を取得・改良したものを総収入金額に算入しないと定めています。返還不要が確定していない場合の定め(第43条)もあります。いずれも確定申告書への記載が要件です。

税金がなくなるわけではない

圧縮記帳をすると固定資産の帳簿価額が小さくなり、その後の減価償却費も小さくなります。補助金を受けた年度の課税を後の年度に繰り延べる仕組みで、税金が免除されるわけではありません。

仮の数字で、1,000万円の設備に返還不要が確定した補助金500万円を充てて圧縮記帳すると、帳簿価額500万円を基に減価償却していくことになります。

補助金の使い道と圧縮記帳

補助金を充てたもの 圧縮記帳(法人税法第42条)
機械装置・建物・ソフトウェアなど、固定資産として計上するものの取得・改良 要件を満たせば対象になりうる
広告費・外注費・委託費・クラウド利用料など、費用として処理するもの 対象外(固定資産の取得・改良に充てるものではない)
賃金・訓練費などの経費を補塡する雇用関係の助成金 対象外(同上)

公募要領にも同じ趣旨の記載があります。持続化補助金(第20回)は、本補助金が所得税法第42条・法人税法第42条の国庫補助金等に該当し、交付の目的に適合した固定資産の取得・改良に充てた場合はこれらの規定を適用できるとしています。新事業進出・ものづくり補助金(第1回)は、固定資産の取得に充てるための補助金は圧縮記帳が認められる一方、技術導入費・専門家経費など固定資産の取得以外に充てる部分には認められないとしています。

新事業進出・ものづくり補助金、持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、業務改善助成金のように、1つの制度で設備などの資産と費用の両方が補助対象になるものは、固定資産の取得・改良に充てた部分について検討します。個別の制度で要件を満たすかは、税理士に確認してください。

5. 消費税の取扱い

補助金そのものは不課税

国税庁の消費税法基本通達5-2-15は、国や地方公共団体等から受ける奨励金・助成金等や、補助金適正化法の補助金等のように「特定の政策目的の実現を図るための給付金」は、資産の譲渡等の対価に該当しないとしています。同通達の(注)は、雇用調整助成金なども対価に該当しないと明記しています。

経費の消費税は、制度のルールで減額・返還が求められる

補助金が不課税でも、補助金で支払った経費の消費税は、一般課税の課税事業者なら仕入税額控除の計算に入ります。このため制度側に、補助金から消費税分を除くルールがあります。

制度 ルール
持続化補助金(第20回) 交付申請は消費税等仕入控除税額を減額して行い、課税事業者は消費税・地方消費税相当額をあらかじめ補助対象経費から減額する。消費税等は補助対象外(免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者が、消費税等を含めて申請し、その内容で交付決定を受けた場合を除く)
業務改善助成金 交付申請時に消費税仕入控除税額を減額する(申請時に明らかでない場合を除く。交付要綱 第5条第4項)。実績報告時に明らかなら減額して報告する(第13条第3項)。事業完了後に申告で確定したら、遅くとも事業完了日の属する年度の翌々年度6月30日までに報告し、控除税額があれば国庫に返還する(第15条)

他の制度も交付規程・公募要領に同様の定めがあるかを確認してください。

公益法人等の特定収入

消費税法第60条第4項により、国・地方公共団体(特別会計)、消費税法別表第三に掲げる法人(公益法人等)、人格のない社団等は、補助金などの「特定収入」の割合が僅少でない場合、簡易課税制度を適用するときを除いて、仕入税額控除の額が調整されます。

6. 落とし穴

落とし穴1: 収益に計上する年度の納税資金

経費を払った年度と補助金を収益に計上する年度がずれると、計上する年度の所得が増えます(→「2. 課税のタイミングがずれる例」)。入金された補助金を使い切る前に、納税資金を税理士と試算してください。

落とし穴2: 計上漏れ

補助金を収入に計上し忘れて修正申告や更正になると、過少申告加算税(国税通則法第65条)がかかることがあります。

落とし穴3: 圧縮記帳の手続漏れ

圧縮記帳は、損金経理による減額または積立金の経理と、確定申告書への明細の記載が要件です(法人税法第42条第1項・第3項)。決算を締める前に税理士と確認してください。

落とし穴4: 消費税の報告・返還漏れ

業務改善助成金は、事業完了後に仕入控除税額が確定したら、控除税額が0円の場合も含めて報告が必要です(交付要綱 第15条)。

落とし穴5: 「助成金は非課税」の誤解

雇用関係の助成金も、法人税基本通達2-1-42のとおり益金に算入します。

7. 税理士に確認すべきポイント

  • 補助金・助成金を収益に計上する事業年度(額の確定・支給決定・休業等の事実のどれで判断するか)
  • 圧縮記帳(または特別勘定)を使うか、その経理方法と申告書の記載
  • 補助金で取得した資産の資産計上と減価償却
  • 消費税等仕入控除税額の減額・報告・返還の要否
  • 公益法人等の場合の特定収入の調整
  • 収益に計上する年度の納税資金

8. よくある質問

Q. 補助金は何の所得・勘定科目になる?

A. 法人は益金に算入します(法人税法第22条第2項)。勘定科目は会計処理の問題なので、顧問税理士と決めてください。個人事業主の所得区分や申告書への書き方は、税理士または税務署に確認してください。

Q. 補助金の振込タイミングと計上タイミングは?

A. 制度によって公募要領の書き方が違います。持続化補助金(第20回)は「補助金の額の確定を受けた事業年度」の収益、新事業進出・ものづくり補助金(第1回)と省力化投資補助金(一般型 第8回)は「支払を受けた事業年度」の収入として計上するとしています。雇用関係の給付金等は法人税基本通達2-1-42に計上する時期の定めがあります。それ以外の制度は、公募要領・交付規程を確認のうえ税理士に確認してください。

Q. 補助金の返還を求められた場合の税務処理は?

A. 返還する金額や加算金、過去に圧縮記帳や特別勘定を使っていたかで処理が変わります。特別勘定を設けている場合は、返還すべきことが確定したときに取り崩す定めがあります(法人税法第43条第2項)。個別に税理士に相談してください。

Q. 圧縮記帳をしないとどうなる?

A. 圧縮記帳は、要件を満たす場合に選べる方法です。使わない場合、補助金は益金に算入し、固定資産は圧縮しない取得価額を基に減価償却します。どちらを選ぶかは今後の利益の見通しなどで変わるため、税理士と相談してください。

9. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

⚠ 本記事は一般的な税務情報であり、個別の税務処理は必ず税理士または税務署にご確認ください。

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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