用途解説

事業承継で使える支援制度の全体像|補助金・引継ぎ支援センター・税制・融資の使い分け

事業承継で使える公的支援は、相談・マッチング(事業承継・引継ぎ支援センター)、税(法人版事業承継税制)、資金(日本政策金融公庫)、費用の補助(事業承継・M&A補助金)の4種類。場面ごとの組み合わせと、期限のある手続きを一次資料で整理しました。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

事業承継で使える公的支援は役割の違う4種類です。相談と相手探しは国が47都道府県に置く事業承継・引継ぎ支援センター、株式を引き継ぐときの税負担は法人版事業承継税制(特例措置は特例承継計画の提出が2027年9月30日まで)、資金は日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金、費用の一部補助は事業承継・M&A補助金(16次の申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00)です。補助金の枠ごとの要件と対象経費は申請判定ガイドで解説しています。

結論

事業承継の場面で使える公的な支援は、役割の違う4種類です(2026年9月15日時点の公式資料で確認)。

役割 制度 主な内容
相談・相手探し 事業承継・引継ぎ支援センター 国が47都道府県に設置している公的な相談窓口。親族内承継の計画づくり、第三者への引継ぎ(M&A)のマッチング、後継者人材バンク
税負担 法人版事業承継税制 後継者が非上場株式を贈与・相続で取得したときの贈与税・相続税の納税猶予・免除。特例措置は特例承継計画の提出が2027年(令和9年)9月30日まで
資金 日本政策金融公庫 事業承継・集約・活性化支援資金 事業承継・M&Aに必要な設備資金・運転資金の融資。国民生活事業は別枠7,200万円、中小企業事業は直接貸付14億4千万円が限度
費用の一部補助 事業承継・M&A補助金 承継予定の会社の設備投資、M&Aの専門家費用、買収後の統合、廃業費用を補助。16次の申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00

補助金は、交付決定の後に契約・支払をした経費しか対象になりません。承継の方法や時期を決める相談と、税・資金の段取りを先に進め、そのうえで補助金を使える取組があるかを確認するのが現実的な順番です。

1. 場面別に使える制度

場面 相談・支援 税制 融資 補助金(事業承継・M&A補助金)
親族・従業員への承継を準備する センターの親族内承継支援(事業承継計画の策定など) 法人版事業承継税制(株式の贈与・相続) 事業承継計画を策定している方などが対象 事業承継促進枠(期限までに承継を完了する予定の会社)
後継者がおらず、第三者に引き継ぎたい(売り手) センターの第三者承継支援、後継者人材バンク 専門家活用枠(売り手支援類型・小規模売り手支援類型)
M&Aで会社・事業を譲り受ける(買い手) センターの第三者承継支援 事業の承継・集約を行う方が対象 専門家活用枠(買い手支援類型)、PMI推進枠
承継・M&Aを機に新しい取組や統合を進める 第二創業・新たな取組・PMIを図る方が対象 PMI推進枠(事業統合投資類型など)
承継・M&Aに伴い事業の一部を廃業する、譲り渡せず廃業して再挑戦する 廃業・再チャレンジ枠

2. 事業承継・引継ぎ支援センター — まず相談する窓口

中小企業基盤整備機構(中小機構)の事業承継・引継ぎポータルでは、センターを「国が47都道府県に設置している公的な相談窓口」と案内しています。親族内承継・従業員承継を含め、事業承継に関する相談に対応しています。

  • 親族内承継支援: 親族や従業員に承継できるよう、事業承継計画の策定などを支援
  • 第三者承継支援: 後継者が不在の場合などに、相談から譲受企業の紹介、成約まで支援
  • 後継者人材バンク: 創業を目指す起業家と、後継者不在の会社・個人事業主を引き合わせる

中小機構は、後継者向けに10か月間全日制の「経営後継者研修」も行っています。

3. 法人版事業承継税制 — 株式を引き継ぐときの税

国税庁のタックスアンサーによると、法人版事業承継税制は、後継者が中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与・相続で取得した場合に、その株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等により納付を免除する制度です。特例措置一般措置の2つがあります。

項目 特例措置 一般措置
事前の計画 特例承継計画の提出(2018年4月1日〜2027年9月30日 不要
適用期限 2018年1月1日〜2027年12月31日の贈与・相続等 なし
対象株数 全株式 総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 相続等80%、贈与100%
承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者 複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化(満たせない場合は理由等の報告書を都道府県知事に提出し確認を受ける) 承継後の5年間、平均8割の雇用維持が必要
  • 対象株数は議決権に制限のない株式等に限ります
  • 個人事業主が事業用資産を引き継ぐ場合は、個人版事業承継税制(国税庁タックスアンサー No.4153・No.4442)があります
  • 適用の可否や試算は、税理士などの専門家に早めに相談してください

4. 日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金

事業承継やM&Aに必要な資金の融資制度です。

項目 国民生活事業 中小企業事業
融資限度額 別枠7,200万円 直接貸付14億4千万円
返済期間 設備資金20年以内・運転資金10年以内(うち据置期間5年以内) 設備資金20年以内・運転資金10年以内(うち据置期間5年以内)
主な対象 事業承継計画を策定している方(国民生活事業は融資後おおむね10年以内に承継が見込まれる方)、事業の承継・集約を行う方と承継・集約される方、経営承継円滑化法の認定を受けた方、承継を機に第二創業・新たな取組・PMIを図る方 など 同左

利率は資金の使いみちや要件で変わります。生活衛生関係営業を営む方向けには、別に「生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金」があります。

5. 事業承継・M&A補助金(16次)の概要

中小企業庁の補助金で、申請はJグランツ、GビズIDプライムが必要です。公募要領は、GビズIDプライムの発行に1〜2週間程度(混雑時は3週間程度)かかるとしています。

枠・類型 補助率 補助上限
事業承継促進枠 小規模事業者等2/3、それ以外1/2 800万円(賃上げ要件を満たせば1,000万円)
専門家活用枠 買い手支援類型 2/3 600万円(DDを行う場合は800万円)
専門家活用枠 売り手支援類型 1/2(営業利益率の低下または赤字なら2/3) 600万円(DDを行う場合は800万円)
専門家活用枠 買い手支援類型 100億企業特例 1,000万円以下の部分1/2、超える部分1/3 2,000万円
専門家活用枠 小規模売り手支援類型 2/3 450万円
PMI推進枠 PMI専門家活用類型 1/2 150万円
PMI推進枠 事業統合投資類型 小規模事業者等2/3、それ以外1/2 800万円(賃上げ要件を満たせば1,000万円)
廃業・再チャレンジ枠 2/3(併用申請は併用する枠の補助率) 300万円
  • 申請受付: 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00(全枠共通)
  • 採択の実績: 15次は申請551件・採択338件(算出すると61.3%)、14次は申請512件・採択311件(同60.7%)
  • 事業承継促進枠は、承継をこれから行う予定の会社が対象です。承継を終えた会社向けの枠ではありません
  • 専門家活用枠で補助事業期間内にクロージングしなかった場合、上限は300万円(小規模売り手支援類型は50万円)に下がります

枠ごとの要件・対象経費・認定経営革新等支援機関の関与は、事業承継・M&A補助金 申請判定ガイドで解説しています。

6. 進める順番

  1. 後継者候補と話し、承継の方法を決める: 親族・従業員に引き継ぐのか、第三者に引き継ぐのか。迷ったら事業承継・引継ぎ支援センターや顧問の税理士に相談する
  2. 株式の移し方と税負担を試算する: 法人版事業承継税制の特例措置を使うなら、特例承継計画の提出期限(2027年9月30日)を先に押さえる
  3. 資金計画を立てる: 株式や事業の買取り、承継後の設備投資に必要な資金を、日本政策金融公庫や取引金融機関に相談する
  4. 補助金を使える取組を切り出す: 設備投資、M&Aの専門家費用、統合、廃業費用のうち、交付決定後に契約・支払ができるものを事業承継・M&A補助金の枠に当てはめる

7. 落とし穴

落とし穴1: 補助金の公募回に合わせて承継の時期を決める

事業承継促進枠は、16次では2031年11月5日までに承継を完了する予定であることが要件で、期限までに承継しなければ補助金は返還の対象です。補助金の都合で承継の段取りを急いだり遅らせたりすると、本来の承継計画が崩れます。

落とし穴2: 承継を終えてから事業承継促進枠を狙う

事業承継促進枠は承継を予定している会社のための枠です。代表交代や株式の移転を済ませた後では、枠の前提から外れます。

落とし穴3: 事業承継税制の特例承継計画の期限を過ぎる

特例措置を使うには、2027年9月30日までに特例承継計画を提出する必要があります。株式の贈与・相続は2027年12月31日までが適用期限です。

落とし穴4: 交付決定の前にM&Aの専門家と契約する

補助金は交付決定後の契約・支払が対象です。仲介会社やFAとの契約を先に済ませると、その費用は補助されません。

落とし穴5: 期間内にクロージングしない前提で成功報酬を見込む

専門家活用枠は、補助事業期間内にクロージングしないと上限が300万円に下がり、原則としてDD費用だけが対象になります。

8. 補助金より先に相談から始めたほうがよいケース

  • 後継者が決まっていない、または候補者と話ができていない
  • 親族内で引き継ぐか、第三者に引き継ぐかを決めていない
  • 株式の評価額や税負担を把握していない
  • 承継に必要な資金の目処が立っていない

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9. よくある質問

Q. 事業承継の相談はどこにすればいいですか?

A. 国が47都道府県に設置している事業承継・引継ぎ支援センターが公的な相談窓口です。親族内承継の計画づくりから、第三者への引継ぎのマッチングまで対応しています。税の試算は税理士、資金は日本政策金融公庫や取引金融機関にも相談してください。

Q. 法人版事業承継税制はいつまで使えますか?

A. 特例措置は、特例承継計画の提出が2027年9月30日まで、贈与・相続等は2027年12月31日までです。一般措置には期限はありませんが、対象株数は総株式数の3分の2まで、相続等の納税猶予割合は80%です。

Q. M&Aの仲介手数料は補助されますか?

A. 事業承継・M&A補助金の専門家活用枠で対象になります。買い手支援類型・売り手支援類型の上限は600万円(DDを行う場合は800万円)です。補助事業期間内にクロージングしなかった場合は上限が300万円に下がります。

Q. 事業承継・M&A補助金の採択率はどのくらいですか?

A. 公式サイトの発表では、15次は申請551件のうち338件、14次は512件のうち311件が採択されました。算出すると約6割です。

Q. 個人事業主の事業承継にも使える制度はありますか?

A. 事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクは、後継者不在の会社だけでなく個人事業主も引き合わせの対象にしています。税は個人版事業承継税制、融資は日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金(国民生活事業は経営承継円滑化法の認定を受けた個人である中小企業者も対象)を確認してください。

10. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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