結論
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者などのキャリアアップ(正社員化や処遇改善)に取り組んだ事業主への助成金です(令和8年度 支給要領 令和8年4月8日付け・パンフレットで確認)。
- 中心となる正社員化コースは、有期雇用からの転換で中小企業1人40万円(重点支援対象者は80万円)。無期雇用からの転換は中小企業20万円(同40万円)
- キャリアアップ計画書は、正社員化などのコース実施日の前日までに労働局へ提出(1か月前など、余裕を持った提出が勧められている)
- 正社員化後6か月分の賃金を支払い、その賃金が転換前6か月より3%以上増えていることが必要
- 支給申請は、6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内
- 審査で競う補助金ではなく、要件を満たせば支給される助成金
1. キャリアアップ助成金の基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省(都道府県労働局・ハローワーク) |
| 財源 | 雇用保険二事業(全額事業主負担) |
| 対象事業主 | 雇用保険の適用事業所の事業主 |
| 助成額 | 定額(コース・企業規模・対象者による) |
| 申請方法 | 窓口への持参・郵送・電子申請 |
| 採択率 | 要件を満たせば支給(採択率という概念はなじまない) |
| 支給 | 6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請し、労働局の審査を経て支給決定(審査にかかる期間は公表されていない) |
2. コースと支給額(令和8年度)
正社員化コース
就業規則などに規定した制度に基づいて、有期雇用労働者等を正社員に転換した場合(派遣労働者の直接雇用を含む)の助成です。1人あたりの支給額は次のとおりです。
| 対象者 | 企業規模 | 有期雇用から転換 | 無期雇用から転換 |
|---|---|---|---|
| 重点支援対象者 | 中小企業 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
| 重点支援対象者 | 大企業 | 60万円(30万円×2期) | 30万円(15万円×2期) |
| 上記以外 | 中小企業 | 40万円(1期) | 20万円(1期) |
| 上記以外 | 大企業 | 30万円(1期) | 15万円(1期) |
- 重点支援対象者: ①雇入れから3年以上の有期雇用労働者、②雇入れから3年未満で、過去5年間に正規雇用労働者だった期間が合計1年以下、かつ過去1年間に正規雇用されていない有期雇用労働者、③派遣労働者・母子家庭の母等・人材開発支援助成金の特定の訓練の修了者
- 雇用期間が通算5年を超える有期雇用労働者は、無期雇用労働者とみなされる
- 1年度1事業所あたりの支給申請上限は20人
- 加算(1事業所1回のみ): 正社員転換制度を新たに規定 20万円(大企業15万円)/多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれか)を新たに規定 40万円(同30万円)/正社員転換等の情報を自社サイトまたは「しょくばらぼ」で公表 20万円(同15万円)
- 障害者を正社員化する場合は「障害者正社員化コース」。中小企業で1人最大120万円(重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用に転換した場合。それ以外の障害者は90万円。大企業は90万円・67.5万円)
賃金規定等改定コース
有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、適用した場合の助成です(1人あたり)。
| 企業規模 | 3%以上4%未満 | 4%以上5%未満 | 5%以上6%未満 | 6%以上 |
|---|---|---|---|---|
| 中小企業 | 4万円 | 5万円 | 6.5万円 | 7万円 |
| 大企業 | 2.6万円 | 3.3万円 | 4.3万円 | 4.6万円 |
- 1年度1事業所あたりの支給申請上限は100人
- 加算(1事業所1回のみ): 職務評価の手法を活用して改定 20万円(大企業15万円)/有期雇用労働者等に適用する昇給制度を新たに規定 20万円(同15万円)
賃金規定等共通化コース
すべての有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成・適用した場合の助成です。1事業所1回のみで、中小企業60万円(大企業45万円)。
賞与・退職金制度導入コース
すべての有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積立てを実施した場合の助成です。1事業所1回のみ。
| 企業規模 | 賞与または退職金のいずれかを導入 | 賞与と退職金を同時に導入 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 40万円 | 56万8,000円 |
| 大企業 | 30万円 | 42万6,000円 |
短時間労働者労働時間延長支援コース(当分の間の暫定措置)
短時間労働者を新たに社会保険に加入させ、労働時間の延長などを行った場合の助成です(1人あたり)。
- 1年目の取組: 小規模企業50万円・中小企業40万円・大企業30万円(労働時間の延長幅と基本給の引上げ率の組み合わせに要件あり)
- 2年目の取組(労働時間をさらに2時間以上延長/基本給をさらに5%以上増加/昇給・賞与・退職金制度の新たな適用 のいずれか): 小規模企業25万円・中小企業20万円・大企業15万円
3. 正社員化コースの主な要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 転換前の雇用 | 転換日の6か月以上前から、正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を受けて雇用されている |
| 転換の根拠 | 就業規則または労働協約などに規定した転換制度に基づいて転換する |
| 正社員の定義 | 期間の定めがない/派遣労働者でない/勤務地・職務が限定されていない(限定のあるものは「多様な正社員」として別に定義)/所定労働時間が通常の労働者と同じ/長期雇用を前提に、賞与または退職金の制度と昇給が就業規則等に規定され、適用されている |
| 賃金 | 転換後6か月の賃金が、転換前6か月より3%以上増額している |
| 解雇等 | 転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、その事業所で事業主都合の離職(解雇等)を出していない |
| 試用期間 | 正社員としての試用期間中は転換完了とみなさず、試用期間終了日の翌日に転換したものとみなす |
| 新規学卒者 | 雇入れ日から1年未満の新規学卒者は対象外 |
4. 申請の流れ
- キャリアアップ管理者を選任し、キャリアアップ計画書(計画期間3年以上5年以内)を作成
- コース実施日(正社員化なら転換日)の前日までに管轄労働局へ提出(労働局が受理する届出で、認定の手続きではない)
- 転換制度がなければ就業規則等を改定
- 就業規則等に基づいて正社員化
- 正社員化後6か月分の賃金を支払う
- 6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請
- 支給審査 → 支給決定
5. 落とし穴
落とし穴1: 計画書の提出が実施日の前日に間に合わない
キャリアアップ計画書は、コース実施日の前日までに提出する必要があります(前日が行政機関の休日なら、その翌日まで)。パンフレットは1か月前など余裕を持った提出を勧めています。実施するコースの取組を計画書に書いていない場合も受給できません。
落とし穴2: 「正社員」の条件を満たしていない
期間の定めのない雇用にしただけでは足りません。長期雇用を前提に、賞与または退職金の制度と昇給が就業規則等に規定され、実際に適用されている必要があります。
落とし穴3: 転換後の賃金が3%増えていない
転換後6か月の賃金が、転換前6か月より3%以上増えていないと対象外です。基本給を上げても、固定残業代などを減らして総額が増えていない場合は注意が必要で、増額の計算に含められない手当もあります(パンフレット参照)。
落とし穴4: 転換の前後に事業主都合の離職を出す
転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、その事業所で解雇などの事業主都合の離職を出していると対象外です。
落とし穴5: 他の助成金との併給調整
同じ行為・同じ賃金の支出について、雇用関係助成金を2つ以上同時に受けることはできません(雇用関係助成金 共通要領0304)。コースどうしでも制限があり、賃金規定等改定コースと短時間労働者労働時間延長支援コースは、同一の対象労働者の同一の支給対象期間に行った処遇改善について、どちらか一方しか支給されません(キャリアアップ助成金支給要領0503ロ)。業務改善助成金で賃上げの対象とした労働者は、賃金規定等改定コースの対象労働者に数えられません(業務改善助成金Q&A 問47)。→ 雇用関係助成金の併給ルール
落とし穴6: 労働保険料の滞納
支給申請日の属する年度の前年度より前の労働保険料を納付していない事業主は、原則として支給を受けられません(雇用関係助成金 共通要領)。
6. 申請を勧めるケース
- 雇用保険の適用事業所である
- 有期雇用などで6か月以上雇っている人を、正社員として長く雇う予定がある
- 正社員に、賞与または退職金の制度と昇給を就業規則で用意できる
- 転換後に賃金を3%以上上げられる
- 転換の前後に事業主都合の離職を出さない見込みである
7. 申請を勧めないケース
- 転換日の前日までにキャリアアップ計画書を出せない
- 正社員にしても、賞与・退職金・昇給の制度を用意できない
- 転換後の賃上げ(3%以上)が難しい
- 転換の前後に人員整理を予定している
- 助成金目当ての形式的な転換
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8. よくある質問
Q. 最初から正社員として雇った人は対象ですか?
A. 対象外です。正社員化コースは、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換した場合(派遣労働者は直接雇用した場合)の助成です。
Q. 派遣社員を正社員として直接雇用した場合は?
A. 対象になりえます。同一の組織単位で6か月以上継続して同じ労働者派遣を受け入れていたことなどが要件で、派遣労働者は重点支援対象者に当たります。
Q. 何人まで申請できますか?
A. 1年度1事業所あたり、正社員化コースは20人、賃金規定等改定コースは100人が支給申請の上限です。
Q. キャリアアップ計画書はいつまでに出せばいいですか?
A. コース実施日の前日までです(前日が行政機関の休日なら、その翌日まで)。パンフレットでは1か月前など、余裕を持った提出が勧められています。
Q. 業務改善助成金と併用できますか?
A. 業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者は、賃金規定等改定コースの対象労働者に数えられません(業務改善助成金Q&A 問47)。→ 雇用関係助成金の併給ルール
9. 情報源
- 厚生労働省 キャリアアップ助成金
- キャリアアップ助成金 支給要領(令和8年4月8日付け/PDF)
- キャリアアップ助成金のご案内 パンフレット(令和8年度版・令和8年4月8日/PDF)
- キャリアアップ助成金のご案内 リーフレット(令和8年度版・令和8年4月8日/PDF)
- キャリアアップ助成金 Q&A(令和8年7月29日/PDF)
- 都道府県労働局
最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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