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業務改善助成金 申請判定ガイド|最低賃金引上げと設備投資の使い方

業務改善助成金は最低賃金近傍労働者の賃上げ + 設備投資で補助率最大4/5(80%)の高補助率。解雇や賃金引下げがあると交付されない期間、対象経費、事業完了期限を解説。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

業務改善助成金は最低賃金近傍労働者の賃上げ + 設備投資で 助成率最大4/5(80%) の制度。助成率は引上げ前の事業場内最低賃金で決まり、1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4。賃上げ額(50円・70円・90円)と引き上げる労働者数で助成上限が決まります(30万〜600万円)。申請の6か月前から、実績報告の前日または賃金引上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日までに解雇や賃金引下げがあると交付されません

結論

業務改善助成金は最低賃金近傍労働者の賃上げ + 設備投資をセットで実施する事業者向けの制度で、助成率は最大4/5(80%) です(令和8年度・2026年9月時点)。助成率は引上げ前の事業場内最低賃金で決まり、1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4 です。

令和8年度の申請期限は都道府県ごとに違い、「その県の地域別最低賃金の発効日の前日」と「11月30日」の早い方です。たとえば東京都は、令和8年度の地域別最低賃金の発効予定日が10月3日(答申時点)なので、申請期限は10月2日です。検討中なら先に自県の発効日を確認してください。予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終える場合もあります。

所管は厚生労働省です。賃上げ額(50円・70円・90円)と引き上げる労働者数で助成上限が決まります(30〜600万円)。申請の6か月前から、実績報告の前日または賃金引上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日までに解雇や賃金引下げがあると交付されません

1. 業務改善助成金の基本スペック

項目 内容
所管 厚生労働省
助成率 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4
助成上限 30万〜600万円(賃上げ額・引き上げる労働者数・事業場規模により変動)
対象 中小企業・小規模事業者(みなし大企業を除く)で、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満の事業場
申請方法 管轄の都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))に紙で申請、またはJグランツで電子申請
GビズID Jグランツで電子申請する場合はGビズIDプライムが必要
採択率 審査で競う方式ではない(予算の範囲内で交付し、申請期間内に募集を終える場合がある)
支払 事業実績報告を出し、助成金の額が確定した後(事業完了期限は交付決定年度の1月31日)

2. 賃上げ額別のコースと上限

令和8年度は「50円・70円・90円」の3コース(令和7年度の30円・45円・60円・90円の4コースから再編)。上限は、引き上げる労働者数と、事業場規模が30人未満かどうかで決まります。

コース 1人 2〜3人 4〜5人 6〜7人 8人以上 10人以上(特例事業者のみ)
50円 30万円(40万円) 40万円(70万円) 70万円 90万円 110万円 130万円
70円 40万円(50万円) 50万円(100万円) 130万円 180万円 230万円 300万円
90円 90万円(100万円) 150万円(240万円) 270万円 360万円 450万円 600万円

※ カッコ内は事業場規模30人未満の事業者の上限。助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4。

10人以上の区分を使えるのは特例事業者だけです。特例事業者は、①事業場内最低賃金が1,050円未満、または②原材料費の高騰などの外的要因で、申請前6か月平均の利益率が前年同期より3%ポイント以上低下している事業者。②に当てはまる場合は、通常は対象外のパソコン等の新規導入も対象になりえます。

3. 対象経費

対象は「生産性の向上・労働能率の増進に資する設備投資等」

公式リーフレットの経費区分と例は次のとおりです。

経費区分 例(公式リーフレット)
機器・設備の導入 POSレジシステムの導入による在庫管理の短縮/リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
経営コンサルティング 国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フローの見直し
その他 顧客管理情報のシステム化
  • 助成額は「設備投資等の費用×助成率」と助成上限額のいずれか安い方です。例: 事業場内最低賃金1,040円(助成率4/5)の事業場で8人を1,130円に引き上げ(90円コース・上限450万円)、設備投資が600万円なら、600万円×4/5=480万円より上限の450万円が支給額になります
  • パソコン・スマートフォン・タブレット等の端末と周辺機器は、通常は対象外です。特例事業者のうち物価高騰等要件に当たる場合だけ、新規導入が対象になりえます(既存機器の入れ替えは対象外)
  • 自動車(特殊用途自動車を除く)は、令和8年度から対象外になりました

対象にならない(業務改善助成金Q&A 問25)

  • 単なる経費削減が目的の経費(LED電球への交換、通信費削減のためのプラン変更、資料作成の外注など)
  • 快適化が目的の職場環境の改善(レイアウト変更、エアコン設置、内装工事、机・椅子の増設など)
  • 通常の事業活動に伴う経費(事務所借料、光熱費、従業員賃金、消耗品費、汎用事務機器など)
  • 広告宣伝費・販売促進費(パンフレット、展示会出展、ランディングページ作成など)
  • 建物・構築物の取得費、再生可能エネルギーの発電設備、娯楽性の高い設備など

4. 賃上げ要件の詳細

事業場内最低賃金

事業場内で最も低い賃金(時給換算)が、令和8年度の改定後の地域別最低賃金未満であること。令和7年9月から対象だった「改定前の地域別最低賃金との差が50円以内」の事業場に加え、令和8年度は差が51円以上でも改定後の地域別最低賃金未満であれば対象になりました(改定後の地域別最低賃金と同額の場合は対象外)。

例: 東京都は改定前1,226円・改定後(答申)1,280円なので、事業場内最低賃金が1,279円までの事業場が対象になります(令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均1,177円で答申された段階です)。

ここでいう事業場内最低賃金は、雇用保険の被保険者で雇入れ後6か月を経過した労働者のうち最も低い時間給です。引き上げる対象労働者も、令和8年度から雇用保険の被保険者に限られました(リーフレットでは週所定労働時間20時間以上の雇用保険加入者)。

賃上げの順序(令和8年度から厳格化)

  • 賃金の引上げは申請より後(郵送の場合は申請書が労働局に到達した後)に行い、地域別最低賃金の発効日の前日までに済ませる(Q&A 問15)。令和7年度は発効日の前日までに引き上げていれば引上げ後の申請も認めていたが、令和8年度は引き上げた後に申請することはできない
  • 複数回に分けた引上げは認められない
  • 引上げ後の事業場内最低賃金と同額を就業規則等に定める

解雇・賃金引下げがあると交付されない期間

申請書の提出日の前日から6か月前の日から、実績報告を行った日の前日または賃金を引き上げてから6か月を経過した日のいずれか遅い日までの間に、次のことがあると助成金は交付されません(交付要綱 第4条第4項)。

  • 解雇(天災などで事業の継続が不可能になった場合や、労働者の責めに帰すべき理由による場合を除く)、勧奨による退職、希望退職の募集による退職
  • 時間当たりの賃金額の引下げ
  • 所定労働時間の短縮や所定労働日の減少による月額賃金の引下げ(やむを得ない場合や労働者の都合による場合を除く)

また、過去に業務改善助成金を受けた事業場で、助成事業の完了日以後に賃金が当時定めた事業場内最低賃金を下回っていると、交付の対象になりません。

このほか、申請書の提出日の前日から1年前の日から、実績報告を行った日の前日または賃金を引き上げてから6か月を経過した日のいずれか遅い日までに労働基準監督署の是正勧告を受けている場合(Q&A 問49)や、労働保険に未加入・保険料を滞納している場合(Q&A 問4)も助成を受けられません。

5. 申請の流れ

  1. 交付要綱・交付要領・Q&A(厚生労働省ホームページ)で要件を確認
  2. 事業場内最低賃金の引上げ計画と、設備投資等の計画を作る
  3. 必要書類を準備(設備投資等の見積書、申請前6か月分の賃金台帳の写し、就業規則など)
  4. 事業場ごとに 交付申請(管轄の労働局に紙で提出、またはJグランツで電子申請。同一事業場の申請は年度内1回まで)
  5. 申請後、地域別最低賃金の発効日の前日までに事業場内最低賃金を引き上げ、同額を就業規則等に定める
  6. 交付決定通知の受領
  7. 交付決定後に設備を導入・支払(交付決定前に導入した設備は対象外)
  8. 実績報告書と支給申請書を提出
  9. 労働局の審査で額が確定し、助成金が支払われる

助成金は、事業完了後に事業実績報告を提出し、額が確定してから支払われます(支払までの期間は公表されていません)。納品・支払完了・賃金引上げは、すべて交付決定年度の1月31日までに終える必要があります(やむを得ない理由があれば、理由書の事前提出で3月31日まで延長される場合あり)。

6. 落とし穴

落とし穴1: 解雇・賃金引下げがあると交付されない

申請の6か月前から、実績報告の前日または賃金引上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日までに、解雇や賃金引下げなどがあると交付されない(交付要綱 第4条第4項)。業績が悪化しても、この期間に賃金を引き下げずに済む計画かを申請前に確認してください。

落とし穴2: 賃金台帳・就業規則の不備

申請には申請前6か月分の賃金台帳の写しが必要で、引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定める必要があります。手当の扱いがあいまいなままだと、事業場内最低賃金を正しく計算できません。申請書類の作成や提出代行は、社会保険労務士に依頼できます(Q&A 問67)。

落とし穴3: 労働保険の未加入・保険料の滞納

労働者を1人でも雇っている場合は労働保険への加入が必須で、未加入や保険料を滞納中の場合は助成を受けられません(Q&A 問4)。申請前に加入と納付の状況を確認してください。

落とし穴4: 設備投資の事業性

助成対象は「生産性の向上、労働能率の増進に資する」と認められる設備投資等に限られます(交付要綱 第3条、Q&A 問24)。単なる経費削減や快適化のための投資、汎用事務機器などは対象外です(Q&A 問25)。設備の導入で、どの作業の時間や手間がどれだけ減るかを説明できる投資を選んでください。

落とし穴5: キャリアアップ助成金と対象労働者が重なる

業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の対象労働者に数えられません(業務改善助成金Q&A 問47)。また、同じ設備投資の費用に国・自治体・公益財団法人等の助成を受けると対象外になります(Q&A 問48)。→ 雇用関係助成金の併給ルール

落とし穴6: 賃上げ対象労働者の整合性

事業場内最低賃金が、令和8年度の改定後の地域別最低賃金以上の事業場は申請できません(Q&A 問3)。また、引き上げる労働者は申請コースの金額以上に賃金を引き上げる必要があり、すでに引上げ後の事業場内最低賃金以上の賃金を受けている労働者は人数に数えられません(リーフレット)。

7. 申請を勧めるケース

  • 最低賃金近傍労働者を雇用している
  • 賃上げ + 設備投資の経営余力がある
  • 賃上げ後の人件費水準維持が可能
  • 労働保険に加入し、保険料を滞納していない
  • 賃金台帳・就業規則が整備済(または整備可)
  • 申請期限(発効日の前日または11月30日の早い方)までに申請し、その後に賃金を引き上げられる

8. 申請を勧めないケース

  • 賃上げ予定がない
  • 最低賃金近傍労働者がいない
  • 設備投資予定がない(賃上げのみしたい)
  • 業績悪化中で賃上げ維持が困難
  • 労働保険に未加入、または保険料を滞納している
  • すでに賃金を引き上げてしまい、これから引き上げる予定がない
  • 交付決定を待たずに設備を導入したい

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9. よくある質問

Q. パート・アルバイトの賃上げでも対象?

A. 対象になりえます。雇用形態ではなく、雇用保険の被保険者であることが条件です(リーフレットでは週所定労働時間20時間以上の雇用保険加入者)。雇入れ後6か月を経過した労働者のうち最も低い時間給が、事業場内最低賃金になります。

Q. 賃上げと設備導入のタイミングは?

A. 令和8年度は、賃金の引上げを申請より後に行い、地域別最低賃金の発効日の前日までに済ませます。設備の発注・導入は交付決定後です。納品・支払・賃金引上げのすべてを交付決定年度の1月31日までに完了させ、実績報告に進みます。

Q. 申請の締切はいつ?

A. 令和8年度は2026年9月1日から、申請する事業場の都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日11月30日のいずれか早い日までです。郵送の場合は、申請書が労働局に到達した後が「申請後」として扱われます(Q&A 問15)。Jグランツで電子申請することもできます(GビズIDプライムが必要)。

Q. 中小企業の定義は?

A. 交付要綱 第2条で、資本金(出資の総額)または常時使用する労働者数のどちらかが基準以下の事業者とされています。製造業等: 3億円以下または300人以下、卸売業: 1億円以下または100人以下、サービス業: 5,000万円以下または100人以下、小売業: 5,000万円以下または50人以下。ただし、大企業が株式の1/2以上を単独で、または2/3以上を複数で所有している、大企業の役員・職員が役員の1/2以上を兼ねている、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える、などの「みなし大企業」は対象外です。

Q. 個人事業主でも対象?

A. 対象です。ただし引き上げる労働者が雇用保険の被保険者である必要があり、労働者(従業員)がいない場合は対象になりません。

Q. 賃上げを撤回したら?

A. 申請書の提出日の前日から6か月前の日から、実績報告を行った日の前日または賃金を引き上げてから6か月を経過した日のいずれか遅い日までに時間当たりの賃金を引き下げると、助成金は交付されません(交付要綱 第4条第4項)。交付決定が取り消されて返還を命じられた場合は、受領日から納付日までの期間に応じて年利10.95%の加算金もかかります(交付要綱 第16条)。計画に変更が出そうな時点で、交付決定を受けた労働局に相談してください。

10. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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