結論
IT・情報通信業の補助金は4つの軸で考えます(2026年4月時点)。
- 新規 SaaS 開発: ものづくり補助金・新事業進出補助金
- エンジニア採用: キャリアアップ助成金
- 技術研修: 人材開発支援助成金(人への投資促進コース)
- オフィス整備: 持続化補助金
ただし、受託開発中心の事業者は補助金が使いにくい特徴があります。理由は本記事で解説。
1. IT業向け補助金の比較
| 制度 | 補助率 | 補助上限 | IT業の適合度 |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 1/2〜2/3 | 1,250万円〜 | ◎(SaaS開発) |
| 新事業進出補助金 | 1/2〜2/3 | 1.5億円 | ◎(新規事業のみ) |
| 人材開発支援助成金(人への投資) | 最大75% | 訓練による | ◎(DX人材育成) |
| キャリアアップ助成金 | 定額 | 1人57万円〜 | ◎ |
| IT導入補助金 | 1/2〜3/4 | 450万円 | △(自社開発SaaSは対象外) |
| 持続化補助金 | 2/3 | 50〜250万円 | ◯(5名以下のみ) |
2. なぜ受託開発中心の事業者は補助金を使いにくいか
理由1: 自社人件費は対象外
ものづくり補助金等で 自社エンジニアの人件費は補助対象外。受託開発の主要コストである自社人件費が補助されない。
理由2: 「自社で使うシステム」の革新性が問われる
「補助金で自社の業務効率化システムを作る」場合、革新性が低いと判断されがち。外販を前提とする SaaS 開発の方が採択されやすい。
理由3: 受託案件の経費は補助対象外
受託先からの売上は事業収入であり、補助対象経費にはなりません。
受託開発企業向けの活用パターン
- 自社製品(SaaS)開発に転換: ものづくり補助金 / 新事業進出補助金
- エンジニア採用: キャリアアップ助成金
- エンジニア研修: 人材開発支援助成金(人への投資)
- 業務効率化システム導入: IT導入補助金(自社使用)
3. SaaS 開発でものづくり補助金
対象になりやすい開発
- 業界特化型 SaaS(建設業向け工程管理など)
- 新技術を使ったプロダクト(AI / IoT / ブロックチェーン)
- 海外展開を見据えた SaaS
対象経費
- システム開発の 外注費(オフショア開発含む)
- クラウドサービス利用料(AWS / Azure / GCP)
- 専門家経費(UI/UXデザイナー、コンサル)
- 知財関連費(特許・著作権関連)
落とし穴
- 自社エンジニアの人件費は対象外
- 補助対象期間内(10〜12ヶ月)にα版以上完成必須
- 採択後の継続的な開発進捗報告
4. 新事業進出補助金で大型 SaaS
適合するケース
- 既存事業(受託開発)から新事業(SaaS事業)への展開
- 業態転換(B2B → B2C等)
- 新分野への参入
補助上限が大きい
- 通常枠: 5,000万円〜1.5億円
- 必須: 認定経営革新等支援機関の事業計画策定支援
5. エンジニア研修で人材開発支援助成金
人への投資促進コース(高度人材育成)
- AIエンジニア研修
- データサイエンティスト研修
- セキュリティ専門家研修
- クラウドアーキテクト研修
訓練経費の 最大75%、訓練中賃金の助成も。
事業展開等リスキリング支援コース
新分野展開に伴うリスキリング訓練。経費 75% + 賃金 960円/時間。
6. キャリアアップ助成金でエンジニア採用
正社員化コース
業務委託・有期雇用エンジニア → 正社員化で1人57万円〜。
注意点
- 雇用保険適用事業所のみ
- 6ヶ月以上の有期雇用後の正社員化が要件
- フリーランス → 正社員化は対象外
7. IT業特有の落とし穴
落とし穴1: 自社人件費の壁
最大コストである自社エンジニア人件費が補助対象外。外注費中心の事業計画が必須。
落とし穴2: 受託案件と補助事業の混同
補助金で開発したシステムを 特定の受託先のために使うと、補助対象事業の独立性が問われる。
落とし穴3: クラウドサービス利用料
AWS等のクラウド利用料は補助対象だが、補助対象期間外の利用料は対象外。
落とし穴4: 知財帰属の整理
外注先と共同開発する場合、知財帰属の契約が必須。曖昧だと採択後にトラブル。
落とし穴5: フリーランスエンジニアの位置づけ
業務委託のフリーランスは雇用関係助成金の対象外。契約形態の見直しが必要なケースあり。
落とし穴6: 海外オフショア開発の経費
オフショア開発費は補助対象になりますが、為替変動リスクで予算オーバーしやすい。
8. IT業の制度選び方
事業形態で選ぶ
| 事業形態 | 推奨制度 |
|---|---|
| 受託開発中心 | キャリアアップ + 人材開発支援 |
| 自社製品(SaaS)開発 | ものづくり補助金 |
| 新事業展開 | 新事業進出補助金 |
| 業務効率化したい | IT導入補助金(自社使用) |
規模で選ぶ
| 従業員数 | 推奨制度 |
|---|---|
| 1〜5名 | 持続化補助金 + IT導入補助金 |
| 6〜20名 | ものづくり補助金 + キャリアアップ |
| 21〜100名 | ものづくり補助金 + 人材開発支援 |
| 100名超 | 新事業進出補助金 |
9. 申請を勧めるケース
- 自社製品開発(SaaS等)の計画あり
- エンジニア採用・育成の予算枠あり
- 認定支援機関と継続的な関係
- 自己資金で外注費を立替え可能
- 採択後の進捗報告に対応する体制
10. 申請を勧めないケース
- 受託開発のみで自社製品開発予定なし
- 自社人件費の補填を期待
- 1〜2ヶ月以内に開発開始したい
- 認定支援機関のサポートを受けない方針
- フリーランス中心の業務委託体制
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11. よくある質問
Q. SaaS スタートアップでも対象?
A. 創業5年未満なら東京都創業助成金、新事業ならものづくり補助金。事業計画の説得力が決め手。
Q. AI開発の研究費は対象?
A. ものづくり補助金、SBIR制度、NEDO委託研究で対象。応用研究・商業化前提。
Q. オフショア開発費は補助対象?
A. 対象。ただし契約書・支払証憑が日本語または翻訳付きで必要。
Q. インボイス対応のシステム導入は?
A. IT導入補助金(インボイス対応類型)で補助率が高い。自社用の会計・請求 SaaS 導入時。
12. 情報源
最終確認日: 2026年4月26日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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