結論
補助金の実績報告書は、補助事業を終えた後に「計画どおりに実施し、対象経費を支払った」ことを証憑で示す書類です(2026年9月時点)。何を出すかは制度ごとに公募要領で決まっていて、たとえば持続化補助金は実績報告書(様式第8)と支出内容の分かる関係書類、デジタル化・AI導入補助金は請求書・支払いの証憑・ITツールの利用を示す画面キャプチャなどを求めています。
証憑で経費や成果物を確認できない分は補助対象外になり、補助金が減額されます。期限までに実績報告書を出さないと、交付決定の取消です(持続化補助金 第20回、新事業進出・ものづくり補助金 第1回)。
入金後も報告が続く制度があります。新事業進出・ものづくり補助金は5年間で計6回の事業化状況報告、省力化投資補助金は効果報告(カタログ注文型は3年間、一般型は5年間)、デジタル化・AI導入補助金(通常枠)は事業計画期間前と1〜3年度目の効果報告です。「採択前に、誰が・いつ・どの書類を用意するか」を決めておいてください。
1. 主な制度で実績報告時に求められるもの
公募要領に書かれている提出物と、支払方法の制限は次のとおりです。
| 制度 | 実績報告で求められるもの | 支払方法の制限 |
|---|---|---|
| 持続化補助金(第20回) | 実績報告書(交付規程様式第8)と支出内容の分かる関係書類。見積書・請求書・領収書などの経理書類や、成果物の写真・業務完了報告書など事業実態の確認に必要な証憑を用意できない経費は補助対象外。委託・外注費は成果物が分かる資料が必要 | 1取引10万円(税抜き)を超える現金支払は対象外 |
| 新事業進出・ものづくり補助金(第1回) | 補助事業実績報告書。広告・ウェブサイトなどは成果物の写真等を全て提出(ネット広告は掲載した時期・内容が分かる資料)。100万円(税抜き)以上のシステム構築費は要件定義書または開発費用算出資料、100万円(税抜き)以上のウェブサイト構築費は開発費用算出資料。保険・共済への加入を示す書類。子育て等の職場環境整備の取組が行われたことの証憑 | 全ての支払いを銀行振込の実績で確認(現金払い・相殺・手形などは対象外) |
| 省力化投資補助金(カタログ注文型) | 省力化製品の発注・契約・納品・検収・請求・支払いの証憑、導入実績の証憑、事業計画の達成状況(省力化の効果、給与支給総額・事業場内最低賃金の実績) | 銀行振込のみ(現金払いは不可) |
| 省力化投資補助金(一般型 第8回) | 補助事業実績報告書、保険・共済への加入を示す書類。額の確定にあたり、補助対象の設備や帳簿類を現地調査 | 原則銀行振込(現金払・手形払など実績を確認できないものは対象外) |
| デジタル化・AI導入補助金(2026 通常枠) | IT導入支援事業者からの請求書・請求明細書、補助事業者名義の口座から支払ったことが分かる振込明細書などの証憑、補助金を受け取る口座の情報、ITツールの利用を証する画面キャプチャなど | 銀行振込とクレジットカードの1回払いのみ(現金は不可) |
「効果の報告」は実績報告の証憑とは別に、補助事業の後に続く報告として求められます(第2章)。
賃上げ・雇用の要件がある制度
- 賃上げを約束した制度では、給与支給総額や事業場内最低賃金の実績を示す書類(賃金台帳など)を求められます(省力化投資補助金のカタログ注文型は実績報告で賃上げの実績を報告)
- 業務改善助成金は、事業実績報告書に加えて、事業場内最低賃金の引上げなど交付要綱第4条の要件を満たしたことを証明する書面と、支給申請書を出します(交付要綱 第13条)
2. 実績報告の期限と、入金後も続く報告
報告書の分量や作成時間の公式な目安はありません。一方、期限と報告の回数は公募要領・交付要綱で確認できます。
| 制度 | 実績報告の期限 | 入金後も続く報告 |
|---|---|---|
| 持続化補助金(第20回) | 補助事業の終了日から30日を経過した日と、提出期限2028年4月10日のいずれか早い日(補助事業の実施期限は2028年3月31日) | 補助事業終了から1年後の状況を「事業効果等状況報告」で報告 |
| 新事業進出・ものづくり補助金(第1回) | 補助事業の完了日から30日を経過した日と、補助事業完了期限日のいずれか早い日(実施期間は交付決定日から10か月以内または14か月以内) | 補助事業を完了した年度の終了後を初回に、5年間で計6回の事業化状況報告。報告しない、または虚偽の数値を報告すると交付決定取消・返還 |
| 省力化投資補助金(カタログ注文型) | 実績報告の提出で補助事業実施期間が終了(実施期間は交付決定日から原則12か月以内) | 補助事業完了後の3年間、毎年度の効果報告(省力化製品の稼働状況、事業計画の達成状況) |
| 省力化投資補助金(一般型 第8回) | 補助事業の完了日から30日を経過した日と、事業完了期限日のいずれか早い日 | 事業計画期間の1年目が終了した後の最初の4月から5年間、毎年の効果報告(賃金台帳の提出も求める) |
| デジタル化・AI導入補助金(2026 通常枠) | 交付決定日から6か月間程度の「補助事業の実施/実績報告期間」内 | 事業計画期間前と1〜3年度目の効果報告(営業利益・人件費・給与支給総額などの数値と、ITツールを継続して活用していることを証する書類) |
| 業務改善助成金(令和8年度) | 事業完了日から1か月を経過する日と、翌会計年度の4月10日のいずれか早い日(交付要綱 第13条) | 賃金引上げから、実績報告の前日または引上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日までの実施状況を、状況報告書で報告(第12条) |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 正社員化後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請 | — |
業務改善助成金は、申請書の提出日の前日から起算して6か月前の日から、実績報告の前日または賃金引上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日までに、解雇や時間当たり賃金の引下げなどがあると交付の対象になりません(交付要綱 第4条第4項第一号)。
本業と並行して進めることになるため、採択前に「誰が、いつ、どの書類を用意するか」を決めておくのが安全です。
3. 確定検査の流れ
実績報告書の提出 → 事務局の審査(書類の訂正・再提出を求められることがある) → 現地での検査・調査 → 補助金額の確定 → 請求 → 補助金の振込。
現地での検査
- 新事業進出・ものづくり補助金は、原則として事務局が実地検査を行い、取得財産や帳簿類を確認できない分は補助対象外です
- 省力化投資補助金(一般型)は、額の確定にあたり補助対象の設備や帳簿類の現地調査を行います
- デジタル化・AI導入補助金は、予告なく立入調査を行う場合があるとしています
書類で食い違いやすい点
- 請求書・領収書の宛名が事業者名と違う
- 支払日や金額が、振込の記録と契約書・請求書で合わない
- 成果物の写真や導入した設備が、事業計画の内容と合わない
- 経費区分の記載誤り・計算誤り
- 手続きの順番が違う(デジタル化・AI導入補助金は、ITツールの契約・発注より先に納品や支払いがあった場合や、請求より先に支払いがあった場合、補助金を交付できず交付決定の取消になることがある)
4. 減額・不支給になるケース
ケース1: 支払方法が制度のルールに合わない
「現金で支払ったので領収書しかない」は、現金払いを認めない制度では対象外です。持続化補助金(第20回)は1取引10万円(税抜き)を超える現金支払を、新事業進出・ものづくり補助金(第1回)は現金払いを対象外とし、デジタル化・AI導入補助金は分割払いやリボ払いも認めていません。
ケース2: 補助事業実施期間外の経費
交付決定前の発注・契約・支払いや、補助事業の期間後の支払いは対象外です。
ケース3: 成果物や導入を確認できない
「ホームページを作ったが公開していない」「広告の掲載を示す資料がない」など、成果物や導入を確認できないと、その経費は対象外になりえます。新事業進出・ものづくり補助金は、補助事業実施期間内にウェブサイトが公開されることや広告が掲載されることを求めています。デジタル化・AI導入補助金は、実績報告の提出までに全てのITツールの利用・運用が始まっている必要があります。
ケース4: 承認を受けずに内容や経費の配分を変えた
補助事業の内容や経費の配分を変える場合は、事前に事務局の承認が必要です(持続化補助金 第20回、省力化投資補助金 一般型 第8回)。承認なしで計画と違う内容・数量で進めると、対象外になることがあります。
ケース5: 期限までに実績報告書を出さない
持続化補助金(第20回)と新事業進出・ものづくり補助金(第1回)は、期限までに実績報告書が提出されなかった場合、交付決定を取り消すとしています。
ケース6: 賃上げの約束を果たせない
- 持続化補助金(第20回)の賃金引上げ特例は、要件を1つでも満たさないと、上乗せ分だけでなく補助金全体が交付されません
- 新事業進出・ものづくり補助金(第1回)は、事業計画期間の最終年度に1人当たり給与支給総額の目標値を達成できないと「補助金交付額×未達成率」の返還、毎年の事業化状況報告で事業場内最低賃金が基準値以上になっていない年は「補助金交付額÷事業計画期間の年数」の返還を求めます(いずれも交付された補助金額が上限)
- 賃上げの加点などを受けて採択されたのに要件を達成できなかった場合、未達が報告されてから18か月間、減点の対象になります(持続化補助金・デジタル化・AI導入補助金・省力化投資補助金 一般型は中小企業庁が所管する補助金への申請で、新事業進出・ものづくり補助金は同補助金への申請で大幅に減点)
5. 実績報告を効率的に進めるコツ
コツ1: 発注の時点から証憑を整理する
見積書・契約書・請求書・振込の記録は、発生したときにスキャンして経費ごとにまとめます。後でまとめて集めようとすると、紛失や日付の食い違いに気づくのが遅れます。
コツ2: フォルダ構造を統一
/2026年度持続化補助金/
/見積書/
/契約書・発注書/
/納品書・検収書/
/請求書/
/振込の記録/
/成果物の写真・資料/
/実績報告書ドラフト/
/事業効果等状況報告の控え/
コツ3: 採択時の支援機関に引き続き相談する
採択時に支援を受けた商工会・商工会議所の経営指導員などに、実績報告書の段階でも相談します。
コツ4: 早めに事務局に質問
不明点は事務局に確認します。後から指摘されるより、事前に確認した方が手戻りが少なくなります。
コツ5: 事務局の手引き・様式を使う
事務局のホームページで公開される手引き・記載例・様式を確認し、ゼロから書かずに様式に沿って埋めます。
6. 実績報告の前に辞退する場合
採択後に実績報告まで進められないと判断した場合は、事業を辞退することもできます。ただし次の点に注意してください。
- 既に発生した経費は 全額自己負担
- 制度所定の辞退の手続きが必要
- すでに補助金を受け取っている場合や、導入したものを解約・利用停止する場合は返還になることがある(デジタル化・AI導入補助金は、効果報告の完了前にITツールを解約・利用停止した場合に辞退の手続きが必要で、補助金の全部または一部の返還が必要になる場合があるとしています)
採択前に 実績報告と、その後の報告の負担を理解し、対応できるか判断してください。
7. 申請を勧めないケース
- 経理担当者が不在で、証憑を整理する人がいない
- 請求書・振込の記録の整理が苦手
- 成果物の写真撮影や、導入した設備・ITツールの利用記録を残す体制がない
- 補助事業の後も数年間、売上・賃金などの数値を報告する体制がない
- 商工会議所・税理士などに相談できない
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8. よくある質問
Q. 実績報告書のテンプレートはどこにある?
A. 各補助金の事務局のホームページで、様式や手引きが案内されます。申請した制度・公募回の様式を使ってください。
Q. 「効果測定レポート」は実績報告に必要ですか?
A. 当サイトで確認した持続化補助金(第20回)、新事業進出・ものづくり補助金(第1回)、省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金の公募要領に「効果測定レポート」という提出物はありません。実績報告では経費の証憑や成果物・導入の資料を出し、効果は補助事業の後に「事業効果等状況報告」(持続化補助金)、「事業化状況報告」(新事業進出・ものづくり補助金)、「効果報告」(省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金)として報告します。省力化投資補助金(カタログ注文型)は、実績報告に省力化の効果などの事業計画の達成状況を含めます。
Q. 税理士に丸投げしても大丈夫?
A. 経費部分は税理士に相談しつつ、成果物や事業計画との対応は事業者本人が説明できるようにしておくのが現実的です。持続化補助金(第20回)は、実績報告書等の作成・送付・手続きに係る費用を補助対象外としています。
Q. 確定検査で減額された場合の対処は?
A. 減額の理由を事務局に確認し、証憑の不足で直せるものがあれば対応します。異議の申し出ができるかは制度ごとに違います。
Q. 採択後の事務処理工数の目安は?
A. 公式な目安はなく、制度・事業規模・証憑の整理状況で大きく変わります。事業実施期間中から並行して処理することが必要です。
9. 情報源
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉第20回 公募要領(PDF)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回 公募要領(PDF)
- 中小企業省力化投資補助金 カタログ注文型 公募要領(PDF)
- 中小企業省力化投資補助金 一般型 第8回 公募要領(PDF)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 通常枠(PDF)
- 業務改善助成金 交付要綱(令和8年度申請分/PDF)
- キャリアアップ助成金 パンフレット(令和8年度版/PDF)
最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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