結論
設備投資で使える代表的な補助金・助成金は3つあり、目的と要件で使い分けます(2026年9月時点)。
- 新事業進出・ものづくり補助金: 新製品・新サービスの開発、新市場への進出、輸出体制の強化に伴う投資。補助上限は枠と従業員数により750万〜7,000万円(賃上げ特例で850万〜9,000万円)
- 中小企業省力化投資補助金: 人手不足を補う省力化投資。カタログ注文型は上限500万〜1,000万円(大幅な賃上げで750万〜1,500万円)、一般型は上限750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例で最大1億円)
- 業務改善助成金: 事業場内最低賃金の引上げと生産性向上の設備投資をセットで行う場合。助成率3/4〜4/5、上限30万〜600万円
ものづくり補助金は23次締切(採択発表2026年8月7日)を最後に次の公募回が告知されておらず、中小企業新事業進出補助金も公募が終了しています。どちらも現在は申請できません。
どの制度も後払い(精算払い)なので、事業費の全額をいったん立て替える資金計画が前提です。
1. 3制度の比較表
| 制度 | 補助率 | 補助上限 | 主な要件 | 受付 | 採択の状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 1/2(革新的新製品・サービス枠の小規模企業・小規模事業者・再生事業者と、グローバル枠は2/3) | 750万〜7,000万円(賃上げ特例で850万〜9,000万円) | 開発・新市場進出・輸出体制強化のいずれか。付加価値額+4.0%/年、一人当たり給与支給総額+3.5%/年 など | 第1回 2026年9月30日〜10月30日18:00 | 第1回のため実績なし |
| 省力化投資補助金 | カタログ注文型 1/2以下/一般型 中小企業1/2・小規模事業者等2/3(特例あり) | カタログ注文型 500万〜1,000万円/一般型 750万〜8,000万円(いずれも賃上げで引上げ) | カタログ登録製品の導入(カタログ注文型)、オーダーメイドの省力化投資(一般型) | カタログ注文型は随時/一般型 第8回 2026年9月18日〜10月16日17:00 | 一般型は第1〜6回で60.9〜69.3%(公表件数から算出)。カタログ注文型は採択率を公表していない |
| 業務改善助成金 | 3/4〜4/5 | 30万〜600万円 | 事業場内最低賃金の引上げ + 生産性向上の設備投資 | 2026年9月1日〜都道府県ごとの期限 | 要件を満たせば支給(採択率という概念はなじまない) |
数字は各制度の公募要領・交付要綱の内容です(2026年9月14日確認)。申請前に必ず最新版を確認してください。
2. 新事業進出・ものづくり補助金 — 開発・新市場進出を伴う大型投資
中小企業庁の補助金で、3つの枠に分かれます(公募要領 第1回)。
| 枠 | 対象となる事業 | 補助上限(賃上げ特例) | 下限 | 補助率 |
|---|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 750万〜2,500万円(850万〜3,500万円) | 100万円 | 1/2(小規模企業・小規模事業者、再生事業者は2/3) |
| 新事業進出枠 | 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 2,500万〜7,000万円(3,000万〜9,000万円) | 750万円 | 1/2 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化 | 2,500万〜7,000万円(3,000万〜9,000万円) | 750万円 | 2/3 |
- 機械を入れるだけでは対象外: 革新的新製品・サービス枠は「開発」が対象です。既存の製品・サービスの生産プロセスの改善だけの事業や、機械装置を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わない事業は対象外と明記されています
- 補助対象経費: 機械装置・システム構築費(必須)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費。新事業進出枠・グローバル枠は建物費も対象です
- 基本要件(3〜5年の事業計画): 付加価値額 年平均+4.0%以上、一人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上、一般事業主行動計画の策定・公表、子育て等の職場環境整備の取り組み、金融機関要件(借入する場合)
- 申請: 本補助金専用の電子申請システム。GビズIDプライムが必要です
- 認定経営革新等支援機関の関与は任意です(助言は可、事業計画書の代筆は不可)
ものづくり補助金・中小企業新事業進出補助金の対象領域を引き継ぐ後継的な位置づけですが、事務局は両者とは「異なる補助金」と明記しています。過去の申請書を流用せず、公募要領を読み直してください。
3. 省力化投資補助金 — 人手不足対策の設備
カタログ注文型と一般型(オーダーメイド型)の2類型があります。
- カタログ注文型: 事務局のカタログに登録された製品(清掃・配膳ロボット、券売機、自動精算機、自動チェックイン機、厨房機器、AGV・AMR、自動倉庫、検査装置 など。製品カテゴリの名称は2026年9月10日版の製品カテゴリ一覧による)から選び、販売事業者と共同で申請します。随時受付で、書類は比較的シンプルです。補助対象は製品本体価格と導入経費(製品本体価格の2割まで)だけで、カタログにない製品は対象外です
- 一般型: カタログにない、自社の現場に合わせた設備・システムを導入します。事業計画が必要で、労働生産性 年平均+4.0%以上・一人当たり給与支給総額 +3.5%以上などの要件があります。第8回の申請受付は2026年9月18日10:00〜10月16日17:00です
一般型の採択率は、公式の申請数・採択数から算出すると第1〜6回で60.9〜69.3%です(直近の第6回は1,841件中1,176件=63.9%)。カタログ注文型は採択審査ではなく交付申請・交付決定の方式で、採択率は公表されていません。
→ 省力化投資補助金の詳細 / 申請判定ガイド
4. 業務改善助成金 — 賃上げとセットなら助成率が高い
事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行った場合に助成されます(厚生労働省)。
- 助成率: 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4
- 上限: 引上げ額(50円・70円・90円)と引き上げる労働者数などで30万〜600万円。10人以上の区分(最大600万円)を使えるのは特例事業者だけです
- 対象: 事業場内最低賃金が、令和8年度の改定後の地域別最低賃金未満の事業場
- 申請期限: 2026年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日と11月30日のいずれか早い日まで。10月1日に発効する県は9月30日が期限です
- 賃金の引上げは申請より後に行い、引上げ後の賃金は6か月以上維持する必要があります
→ 業務改善助成金の詳細 / 申請判定ガイド
5. どの制度を選ぶべきか
新事業進出・ものづくり補助金が合う事業者
- 自社の技術で新製品・新サービスを開発する、または既存事業と異なる市場に進出する
- 3〜5年、一人当たり給与支給総額を年平均+3.5%以上上げ続ける見通しがある
- 減額されても補助下限額(100万円/750万円)を割らない規模の投資である
- 事業費の全額を1年以上立て替えられる
省力化投資補助金が合う事業者
- 人手不足の解消が目的
- 欲しい設備がカタログにある(カタログ注文型)、またはオーダーメイドの事業計画を作れる(一般型)
業務改善助成金が合う事業者
- 事業場内最低賃金が、改定後の地域別最低賃金に届いていない
- 賃上げと設備投資をセットで実施し、引上げ後の賃金を維持できる
- 自県の申請期限に間に合う
6. 設備投資補助金の落とし穴
落とし穴1: 立替えキャッシュフロー
どの制度も後払いです。新事業進出・ものづくり補助金は、交付申請が採択発表から原則2か月以内、補助事業期間が交付決定から10か月(新事業進出枠・グローバル枠は14か月)以内で、その後に実績報告・確定検査を経て支払われます。実施期間は採択発表日から最長12か月以内(新事業進出枠・グローバル枠は16か月以内)なので、採択発表から振込まで1年を超えることがあります。自己資金かつなぎ融資による立替えを準備してください。
落とし穴2: 交付決定前の発注
新事業進出・ものづくり補助金、省力化投資補助金とも、交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は対象外です。業務改善助成金も、設備の発注・導入は交付決定後に行います。
落とし穴3: 期限内の完了
新事業進出・ものづくり補助金は、補助事業期間内に検収・支払いまで終える必要があります。業務改善助成金は、交付決定年度の1月31日までに納品・支払い・賃金引上げのすべてを完了させます。納期の長い特注設備は注意してください。
落とし穴4: 賃上げ要件の未達による返還
新事業進出・ものづくり補助金は、一人当たり給与支給総額の目標を従業員等に表明していなければ全額返還、目標が未達なら未達率に応じて返還です。事業場内最低賃金(地域別最低賃金+30円以上)が未達の年も返還の対象になります。業務改善助成金も、引上げ後の賃金を維持しないと返還の対象です。
落とし穴5: 補助下限額と減額
新事業進出・ものづくり補助金は、交付申請の精査で交付決定額が減額されることがあります。その結果、補助金額が補助下限額(革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠・グローバル枠750万円)を下回ると採択取消になります。
落とし穴6: 相見積と中古品
新事業進出・ものづくり補助金では、交付申請の段階で、契約(発注)先1件あたり50万円(税抜)以上の経費に3者以上の相見積が必要です。省力化投資補助金のカタログ注文型は中古品が対象外です。中古品の扱いは制度ごとに違うため、公募要領で確認してください。
7. 申請を勧めないケース
- すでに設備を発注・契約・支払い済み
- 1〜2か月以内に設備が必要
- 自己資金とつなぎ融資を合わせても全額を立て替えられない
- 採択後の事務処理(交付申請・実績報告・確定検査)に対応する体制がない
- 賃上げ要件を達成する経営計画が描けない
- 目的が既存設備の更新だけで、開発・新市場進出・省力化・賃上げのいずれにも当たらない
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8. よくある質問
Q. ものづくり補助金や中小企業新事業進出補助金は今も申請できますか?
A. 現在は申請できません。ものづくり補助金は23次締切(応募締切2026年5月8日・採択発表2026年8月7日)を最後に24次が告知されておらず、中小企業新事業進出補助金は公式サイトで公募終了と案内されています。開発や新市場進出を伴う設備投資は、新事業進出・ものづくり補助金の第1回公募(応募申請 2026年9月30日〜10月30日18:00)が対象になります。
Q. 機械を買うだけでも新事業進出・ものづくり補助金の対象ですか?
A. 対象外です。革新的新製品・サービス枠は、機械装置を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わない事業や、生産プロセスの改善だけの事業を対象外としています。省力化が目的なら省力化投資補助金を検討してください。
Q. リースやレンタルは補助対象ですか?
A. 制度により異なります。省力化投資補助金のカタログ注文型は、登録製品の購入または借用の費用が対象です。新事業進出・ものづくり補助金と業務改善助成金は、それぞれの公募要領・交付要綱で確認してください。
Q. 見積もりはいつ取ればいいですか?
A. 発注・契約・支払いは交付決定後ですが、見積もりは交付決定より前に必要になります。新事業進出・ものづくり補助金では、交付申請の段階で、1件50万円(税抜)以上の発注先について3者以上の相見積を用意します。金融機関確認書を発行した金融機関や、事業計画作成支援者への発注・見積もりは認められません。
Q. 同じ設備に複数の制度を使えますか?
A. 同じ経費に重ねることはできません。省力化投資補助金は国の他の補助金と補助対象経費が重複するものを対象外とし、業務改善助成金も同じ設備投資等の費用に国・自治体等の補助を受けている場合は対象外です。→ 補助金は併用できる?重複受給ルール
9. 情報源
最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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