結論
採用・人材確保で使える代表的な助成金は、厚生労働省の雇用関係助成金です(2026年9月時点)。審査で競う補助金と違い、支給要件を満たせば支給されるのが特徴です。
- キャリアアップ助成金の正社員化コース: 有期雇用労働者等を正社員に転換した場合、中小企業は有期雇用からの転換で1人40万円(重点支援対象者は80万円)、無期雇用からの転換で20万円(同40万円)
- 特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金: 就職困難者の雇入れや、試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主向け。支給額・要件は厚生労働省の支給要領・パンフレットで確認してください
- 人材開発支援助成金: 採用した従業員の訓練経費と訓練中の賃金の一部を助成
いずれも、期限のある書類の提出(キャリアアップ計画書など)、就業規則・賃金台帳の整備、労働保険料の納付が前提です。
1. 採用関連の主な助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
就業規則などに規定した転換制度に基づいて、有期雇用労働者等を正社員に転換した場合(派遣労働者の直接雇用を含む)の助成です。1人あたりの支給額は次のとおりです(令和8年度)。
| 対象者 | 企業規模 | 有期雇用から転換 | 無期雇用から転換 |
|---|---|---|---|
| 重点支援対象者 | 中小企業 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
| 重点支援対象者 | 大企業 | 60万円(30万円×2期) | 30万円(15万円×2期) |
| 上記以外 | 中小企業 | 40万円 | 20万円 |
| 上記以外 | 大企業 | 30万円 | 15万円 |
- 対象: 雇用保険の適用事業所
- 転換日の6か月以上前から、正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を受けて雇用していること
- 重点支援対象者は、雇入れから3年以上の有期雇用労働者、派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練の修了者など
- 1年度1事業所あたりの支給申請上限は20人
- 障害者を正社員化する場合は「障害者正社員化コース」(中小企業で1人最大120万円。重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正社員にした場合)
→ キャリアアップ助成金の詳細 / 申請判定ガイド
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
就職困難者を雇い入れた事業主向けの助成金です。支給額や支給対象期間は対象者の区分などで変わるため、厚生労働省の支給要領・パンフレットで確認してください。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
本採用の前に試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主向けの助成金です。対象者・支給額は厚生労働省のページで確認してください。
人材開発支援助成金
採用した従業員の訓練経費と訓練中の賃金の一部を助成します。OFF-JT(人材育成支援コース)は実訓練時間10時間以上が要件で、職業訓練実施計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出する必要があります。
2. 助成金の比較表
| 助成金 | 対象となる取組 | 支給額(令和8年度) | 押さえるべき期限 |
|---|---|---|---|
| キャリアアップ(正社員化) | 有期雇用労働者等 → 正社員 | 中小企業は有期雇用からの転換で1人40万円(重点支援対象者80万円)、無期雇用からは20万円 | 計画書はコース実施日の前日まで/支給申請は6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内 |
| 特定求職者雇用開発(特定就職困難者) | 就職困難者の雇入れ | 対象者の区分による(厚生労働省で確認) | 支給要領で確認 |
| トライアル雇用(一般トライアル) | 試行雇用 | 厚生労働省で確認 | 支給要領で確認 |
| 人材開発支援 | 従業員の訓練 | 中小企業は訓練経費の45〜100%(コース・雇用形態・賃金要件で異なる)と賃金助成 | 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで |
3. 申請の前提条件
前提1: 雇用保険の適用事業所で、労働保険料を納付していること
キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金とも、雇用保険の適用事業所が対象です。支給申請日の属する年度の前年度より前の労働保険料を納付していない事業主は、原則として支給を受けられません(雇用関係助成金 共通要領)。
前提2: 就業規則等に転換制度を規定すること
正社員化コースは、就業規則または労働協約などに規定した転換制度に基づいて転換することが要件です。転換後の「正社員」は、期間の定めがないだけでなく、長期雇用を前提に賞与または退職金の制度と昇給が規定・適用されている必要があります。
前提3: 事業主都合の離職を出していないこと
正社員化コースでは、転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、その事業所で解雇などの事業主都合の離職を出していると対象外です。
前提4: キャリアアップ計画書を期限内に提出すること
キャリアアップ計画書(計画期間3〜5年)を作成し、コース実施日(正社員化なら転換日)の前日までに管轄労働局へ提出します。労働局が受理する届出で、認定を受ける手続きではありません。
4. 落とし穴
落とし穴1: 「採用したらすぐもらえる」わけではない
正社員化コースは、正社員化後6か月分の賃金を支払ってから、その翌日から2か月以内に支給申請します。その後に支給審査があるため、転換から入金まで半年以上かかります。
落とし穴2: 計画書の提出が間に合わない
キャリアアップ計画書は、コース実施日の前日までに提出する必要があります(パンフレットは1か月前など余裕を持った提出を勧めています)。計画書に実施するコースの取組が書かれていないと受給できません。
落とし穴3: 転換後の賃金が3%増えていない
転換後6か月の賃金が、転換前6か月より3%以上増えていないと対象外です。
落とし穴4: 他の助成金との併給調整
同じ行為や、同じ賃金・経費の支出について、雇用関係助成金を2つ以上同時に受けることはできません(共通要領0304)。組み合わせの可否は厚生労働省の併給調整表で決まります。
- キャリアアップ助成金(正社員化)× 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者): 併給可能。ただし特開金の支給対象となった有期雇用労働者は、転換前の雇用形態を「無期雇用労働者」とする
- キャリアアップ助成金(正社員化)× トライアル雇用助成金(一般): 「同時に双方の支給要件を満たすことはない」
- キャリアアップ助成金(正社員化)× 人材開発支援助成金(人材育成支援): 併給可能
落とし穴5: 助成金目当ての雇用は事業を傷める
「助成金が出るから人を雇う」のは順序が逆です。事業に必要な人を雇い、要件に合う場合に助成金を活用するのが基本です。
落とし穴6: 社労士費用が思ったより高い
社労士に申請を依頼する場合の報酬体系(着手金・成功報酬・顧問契約など)は事務所によって異なります。依頼前に見積もりを取り、報酬を差し引いて手元に残る額を確認してください。
5. 申請を勧めるケース
- 雇用保険の適用事業所で、労働保険料を納付している
- 就業規則に転換制度と、正社員の賞与または退職金・昇給の制度を規定できる
- 有期雇用などで6か月以上雇っている人を、正社員として長く雇う予定がある
- 転換後に賃金を3%以上上げられる
- 転換の前後に事業主都合の離職を出さない見込みである
6. 申請を勧めないケース
- 雇用保険に加入していない、または労働保険料を滞納している
- 転換日の前日までにキャリアアップ計画書を出せない
- 正社員にしても、賞与・退職金・昇給の制度を用意できない
- 助成金が出るという理由だけで採用や転換を考えている
- 転換の前後に人員整理を予定している
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7. よくある質問
Q. パート・アルバイトを正社員にしても対象ですか?
A. 対象になりえます。正社員化コースは、転換日の6か月以上前から有期雇用労働者等として雇用している人を、就業規則等の転換制度に基づいて正社員に転換した場合の助成です。最初から正社員として雇った人は対象外です。
Q. 創業時の採用に使える助成金はありますか?
A. 東京都内で創業する場合、東京都創業助成金は従業員人件費を助成対象に含みます(都内勤務の直接雇用者。正社員は1人月額35万円まで、役員・親族は対象外)。助成率2/3以内・上限400万円で、指定された23種類の創業支援事業の利用などが要件です。
Q. 派遣社員を直接雇用して正社員にしたら?
A. キャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象になりえます。同一の組織単位で6か月以上継続して同じ労働者派遣を受け入れていたことなどが要件で、派遣労働者は重点支援対象者に当たります。
Q. トライアル雇用のあと正社員にしたら、両方の助成金を受けられますか?
A. 併給調整表では、トライアル雇用助成金(一般トライアル)とキャリアアップ助成金(正社員化)は「-」(同時に双方の支給要件を満たすことはない)とされています。トライアル雇用後の正社員化を正社員化コースの対象にするかは、キャリアアップ助成金の支給要領・Q&A・パンフレットに明記がないため、雇入れの前に労働局へ確認してください。
Q. 助成金は申請したらすぐもらえますか?
A. いいえ。正社員化コースは、転換後6か月分の賃金を支払ってから支給申請し、その後に支給審査があります。審査期間の公式な実績値は公表されていないため、入金まで時間がかかる前提で資金計画を立ててください。
8. 情報源
- 厚生労働省 雇用関係助成金検索
- 厚生労働省 キャリアアップ助成金
- キャリアアップ助成金のご案内 令和8年度版 パンフレット(令和8年4月8日/PDF)
- キャリアアップ助成金のご案内 令和8年度版 リーフレット(令和8年4月8日/PDF)
- 雇用関係助成金 共通要領(令和8年4月8日現在・別紙1〜3を含む/PDF)
- 都道府県労働局・ハローワーク
最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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