用途解説

従業員研修に使える助成金の比較|研修の形態別に合う国・自治体の制度

従業員研修に使える制度を、研修の時間数・形態・受講者の雇用形態から比較。国の人材開発支援助成金は10時間以上の訓練が中心で、短い研修は自治体の制度、ITツールの操作研修はデジタル化・AI導入補助金が候補になります。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

研修費の助成で国の中心は人材開発支援助成金で、中小企業の経費助成率は45〜100%(コース・雇用形態・賃金要件で異なる)です。ただし人材育成訓練は実訓練時間10時間以上が要件なので、短い研修は自治体の制度(東京都のスキルアップ助成金は3時間以上10時間未満)が候補になります。ITツールの導入に伴う操作研修はデジタル化・AI導入補助金の役務、有期契約の従業員を訓練して正社員にするなら人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の組み合わせを検討します。人材開発支援助成金の要件・手続きの詳細は申請判定ガイドで解説しています。

結論

従業員研修に使える公的な制度は、研修の時間数・形態・受講者の雇用形態で合うものが変わります(2026年9月15日時点の公式資料で確認)。

  • 10時間以上の研修: 国の人材開発支援助成金が中心。中小企業の経費助成率は45〜100%(コース・雇用形態・賃金要件で異なる)
  • 10時間未満の短い研修: 人材開発支援助成金の人材育成訓練は対象外。東京都内の事業者なら、東京しごと財団のスキルアップ助成金(3時間以上10時間未満の研修が対象)が候補。ほかの地域は自治体の制度を確認
  • ITツールを導入するときの操作研修: デジタル化・AI導入補助金の役務(導入設定・マニュアル作成・導入研修)
  • 有期契約の従業員を訓練して正社員にする: 人材開発支援助成金の有期実習型訓練と、キャリアアップ助成金の正社員化コース

どの制度も、研修を始める前の手続きが必要です。人材開発支援助成金の要件・対象外の研修・申請の流れは、人材開発支援助成金 申請判定ガイドにまとめています。

1. 研修の形態別に合う制度

研修の形態 まず検討する制度 押さえる条件
外部講師・研修会社の研修(10時間以上) 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) 実訓練時間10時間以上。中小企業の経費助成率は正規雇用労働者等45%・有期契約労働者等70%(賃金要件等で+15%)
3時間以上10時間未満の短い研修 東京都: 事業内・事業外スキルアップ助成金/ほかの地域は自治体の制度 東京都の制度は都内に本社または主たる事業所があること
eラーニング 人材開発支援助成金(経費助成のみ)/東京都: 事業外スキルアップ助成金・DXリスキリング助成金 人材開発支援助成金は賃金助成の対象外。東京都の事業内スキルアップ助成金は集合研修のみ
サブスクリプション型の研修サービス 人材開発支援助成金(人への投資促進コース・定額制訓練) 中小企業の経費助成率60%(賃金要件等で75%)。賃金助成なし
DX・デジタル分野の研修 人材開発支援助成金(高度デジタル人材訓練)/東京都: DXリスキリング助成金 高度デジタル人材訓練は中小企業で経費75%・賃金1人1時間1,000円
新規事業の立ち上げなどに伴う研修 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) 中小企業で経費75%・賃金1人1時間1,000円。令和8年度末までの時限措置
有期契約の従業員をOJTとOFF-JTで育てて正社員にする 人材開発支援助成金(有期実習型訓練)+キャリアアップ助成金 正社員化した場合の経費助成率75%、賃金要件等を満たすと100%
従業員が自発的に受ける講座の費用を会社が負担する 人材開発支援助成金(自発的職業能力開発訓練) 経費助成率45%(賃金要件等で60%)
ITツール導入時の操作研修 デジタル化・AI導入補助金(役務) 登録ITツールのソフトウェアと対になる役務に限る
公的機関の在職者向け訓練を使う JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の生産性向上支援訓練 助成金ではなく訓練サービス。受講料は受講者1人3,300〜6,600円(税込)

2. 人材開発支援助成金 — 国の中心になる制度

厚生労働省の助成金で、雇用する被保険者に職務に関連した訓練を受けさせた事業主に、訓練経費と訓練中の賃金の一部を助成します。研修費に使える国の制度では助成率が高く、上限額も大きい制度です。

主な訓練の助成率(中小企業・令和8年度)

訓練 経費助成率 賃金助成(1人1時間)
人材育成訓練(正規雇用労働者等) 45%(賃金要件等で60%) 800円(同1,000円)
人材育成訓練(有期契約労働者等) 70%(同85%) 800円(同1,000円)
有期実習型訓練(正社員化した場合) 75%(同100%) 800円(同1,000円)
高度デジタル人材訓練 75% 1,000円
定額制訓練 60%(同75%) なし
自発的職業能力開発訓練 45%(同60%) なし
事業展開等リスキリング支援コース 75% 1,000円
  • 「賃金要件等」は、訓練後に賃金を5%以上上げた場合、または資格等手当を払って賃金を3%以上上げた場合です
  • eラーニング・通信制の訓練は賃金助成の対象外です
  • 経費助成には1人1訓練あたりの限度額があり、人材育成支援コースの中小企業は15万円(10時間以上100時間未満)/30万円(100時間以上200時間未満)/50万円(200時間以上)です
  • 1事業所の年度あたりの支給限度額は、人材育成支援コース1,000万円、人への投資促進コース2,500万円(成長分野等人材訓練を除く。自発的職業能力開発訓練は300万円まで)、事業展開等リスキリング支援コース1億円です

使う前に押さえる条件

  • 職業訓練実施計画届を、訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する(後から出せない)
  • 人材育成訓練は実訓練時間10時間以上、受講者の受講時間が実訓練時間の8割以上
  • 対象は雇用する被保険者(経営者だけの研修は対象外)

コースごとの対象訓練、対象外になる研修、支給申請までの流れは人材開発支援助成金 申請判定ガイドで解説しています。

3. 東京都内の事業者 — スキルアップ支援事業(令和8年度)

公益財団法人東京しごと財団が、中小企業等の研修に3つの助成金を用意しています(令和8年4月1日から令和9年3月31日までに開始し、令和9年8月31日までに終わる研修が対象)。国の人材開発支援助成金が対象にしにくい3時間以上10時間未満の研修を対象にしている点が特徴です。

助成金 対象になる研修 助成額 限度額(1申請企業等あたり)
事業内スキルアップ助成金 自社の従業員向けに計画する集合研修(同時双方向のオンラインを含む)。専門的な技能・知識を持つ講師が行い、研修ごとに2名以上が8割以上受講 助成対象受講者数×研修時間数×800円 事業外スキルアップ助成金と合わせて150万円
事業外スキルアップ助成金 教育機関が計画した公開研修(集合研修またはeラーニング) 小規模企業者は経費の2/3、中小企業等は1/2(いずれも1人1研修2万5,000円まで) 事業内スキルアップ助成金と合わせて150万円
DXリスキリング助成金 DX推進のための研修(教育機関の公開研修、または教育機関に委託するオーダーメイドの集合研修) 経費の3/4(1人1研修7万5,000円まで) 100万円

3つに共通する主な要件は次のとおりです。

  • 都内に本社または主たる事業所があり、受講者は都内の事業所に常時勤務する従業員(代表者・個人事業主本人は対象外。役員は雇用保険に加入している場合のみ対象)
  • 1研修の総研修時間数が3時間以上10時間未満で、受講者が総研修時間数の8割以上を受講する
  • 業務命令として労働時間内に行い、所定の賃金を払う。研修の経費は全額を会社が負担する
  • その研修について国・地方公共団体の助成を受けていない、今後も受ける予定がない
  • 事業内スキルアップ助成金の交付申請は、研修開始予定日の1か月前まで

このほか、建設・建築・運輸分野の資格取得などを対象にした「資格取得サポート助成金」もあります。東京都以外の事業者は、都道府県・区市町村に同じような制度があるかを確認してください(当サイトでは他の自治体の制度を個別に確認していません)。

4. 研修費そのもの以外で関係する制度

デジタル化・AI導入補助金 — ITツールの導入研修

補助対象のITツールには、ソフトウェアのほかに「役務」があり、その中に導入設定・マニュアル作成・導入研修のカテゴリーがあります(2026 公募要領)。

  • 対象は、ITツール登録時に選んだソフトウェアと対になっている役務だけです。研修だけを申請することはできません
  • 役務(導入コンサルティング・導入研修・保守サポートなど)の補助対象経費は、合計200万円が上限です
  • 社内向け研修ツール(eラーニングの作成・配信機能など)は、ソフトウェアの業務プロセス(総務・人事・給与・労務・教育訓練など)の例に挙がっています

デジタル化・AI導入補助金の詳細

キャリアアップ助成金 — 訓練のあとに正社員化する場合

正社員化コースで有期雇用から正社員に転換すると、中小企業は1人40万円、重点支援対象者は80万円です。人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した人は、重点支援対象者に含まれます(令和8年度リーフレット・パンフレット)。

キャリアアップ助成金の詳細

業務改善助成金 — 研修ではなく設備投資等が中心

事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資等を行った場合の助成金です。リーフレットの経費区分の例は、機器・設備の導入や経営コンサルティングなどです。研修が目的なら、先に上の制度を検討してください。

業務改善助成金の詳細

JEEDの生産性向上支援訓練

全国のポリテクセンターなどに置かれた生産性向上人材育成支援センターが、在職者向けに行う職業訓練です。助成金ではありませんが、費用を抑えて外部の訓練を使えます。

  • 訓練時間は6時間から30時間(IT業務改善の分野は4時間から30時間)
  • 受講料は受講者1人3,300〜6,600円(税込)。IT業務改善の分野は2,200〜4,400円(税込)
  • 企業の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズしたコースも設定される

5. 制度を選ぶ手順

  1. 研修の時間数を確認する: 10時間以上なら人材開発支援助成金、10時間未満なら自治体の制度を探す
  2. 研修の形態を確認する: 外部の公開講座、社内で企画する研修、eラーニング、サブスクリプション型のサービスのどれか
  3. 受講者の雇用形態を確認する: 有期契約の従業員を正社員にする予定があれば、有期実習型訓練とキャリアアップ助成金を検討する
  4. 同じ研修に重ねて受けられるかを確認する: 東京都のスキルアップ助成金は、国・地方公共団体の助成を受ける研修を対象外にしている
  5. 期限から逆算する: 人材開発支援助成金の計画届は訓練開始日の1か月前まで、東京都の事業内スキルアップ助成金の交付申請も研修開始予定日の1か月前まで

6. 落とし穴

落とし穴1: 研修を始めてから助成金を探す

人材開発支援助成金も東京都のスキルアップ助成金も、研修を始める前の届出・申請が前提です。すでに始めた研修を後から対象にすることは、原則としてできません。

落とし穴2: 同じ研修に国と自治体の助成を重ねる

東京都のスキルアップ助成金は、その研修について国・地方公共団体の助成を受けていないことが要件です。1つの研修にどちらを使うかを、申請前に決めてください。

落とし穴3: 所定労働時間外に受講させる

東京都のスキルアップ助成金は、業務命令として労働時間内に行い所定の賃金を払うことが要件です。人材開発支援助成金も、所定労働時間外・休日の受講分は賃金助成の対象外です。

落とし穴4: 研修だけでデジタル化・AI導入補助金を申請しようとする

導入研修は、登録ITツールのソフトウェアと対になる役務としてだけ補助対象になります。研修会社の講座を単独で受ける費用は対象になりません。

7. 申請を勧めないケース

  • 研修開始まで1か月を切っている
  • 経営者・役員だけが受ける研修
  • 業務と関係の薄い研修
  • 受講時間の記録や受講証明を残せない
  • 所定労働時間外に受講させる前提の研修

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8. よくある質問

Q. 10時間未満の研修でも助成されますか?

A. 人材開発支援助成金の人材育成訓練は実訓練時間10時間以上が要件なので、対象になりません。東京都内の事業者なら、事業内・事業外スキルアップ助成金やDXリスキリング助成金が3時間以上10時間未満の研修を対象にしています。ほかの地域は自治体の制度を確認してください。

Q. 研修費が全額助成されることはありますか?

A. 人材開発支援助成金では、有期契約の従業員を正社員にする有期実習型訓練で、賃金要件等を満たした場合に中小企業の経費助成率が100%になります。ただし1人1訓練あたりの経費助成の限度額があります。

Q. eラーニングは対象ですか?

A. 人材開発支援助成金では対象になりえますが、経費助成のみで賃金助成は出ません。東京都の事業外スキルアップ助成金とDXリスキリング助成金はeラーニングも対象です(標準学習時間3時間以上10時間未満)。事業内スキルアップ助成金は集合研修だけが対象です。

Q. 同じ研修に人材開発支援助成金と東京都の助成金を両方使えますか?

A. 使えません。東京都のスキルアップ助成金は、その研修について国・地方公共団体の助成を受けていないこと、今後も受ける予定がないことを要件にしています。

Q. 新しいシステムの操作研修は対象になりますか?

A. そのシステムがデジタル化・AI導入補助金の登録ITツールで、ソフトウェアと対になる役務として導入研修が登録されていれば、補助対象になりえます。役務の補助対象経費は合計200万円が上限です。

Q. 経営者自身の研修は対象ですか?

A. 人材開発支援助成金の対象は雇用する被保険者で、東京都のスキルアップ助成金も申請企業の代表者・個人事業主本人を対象外にしています。

9. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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