業種解説

卸売業で使える補助金|販路開拓・物流効率化・EDI導入で活用できる制度

卸売業の補助金は、販路開拓なら持続化補助金(従業員5人以下のみ)、受発注・在庫管理のIT化ならデジタル化・AI導入補助金、物流の省力化なら省力化投資補助金。新事業進出・ものづくり補助金は新製品の開発や新市場への進出が条件です。

補助金・助成金リアリティ編集部 2026年4月26日公開 最終確認 2026/9/15
この記事の結論

卸売業の補助金は3軸: ①販路開拓(持続化補助金。常時使用する従業員5人以下のみ)、②受発注・在庫管理のIT化(デジタル化・AI導入補助金。事務局に登録されたITツールのみ)、③物流の省力化(省力化投資補助金)。新事業進出・ものづくり補助金は新製品・新サービスの開発や自社にとって新しい市場への進出が条件で、物流設備を入れるだけの事業は当てはまりません。商品の仕入れはどの制度でも対象経費の区分にありません。

結論

卸売業の補助金は3つの軸で考えます(2026年9月時点)。

  1. 販路開拓: 持続化補助金(展示会出展・販促物・ウェブサイトなど)
  2. 受発注・在庫管理のIT化: デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金。事務局に登録されたITツールのみ)
  3. 物流の省力化: 省力化投資補助金(登録製品のカタログ注文型と、オーダーメイドの一般型)

卸売業は持続化補助金の 小規模事業者の基準が「常時使用する従業員5人以下」で、製造業(20人以下)より厳しい点に注意してください。5人を超える卸売業は、中小企業向けの制度が中心になります。

新製品・新サービスの開発や、自社にとって新しい市場への進出を伴う大型投資なら、新事業進出・ものづくり補助金も候補です。ただし、物流設備を導入するだけの事業は対象になりません。

1. 卸売業向け補助金の比較

制度 補助率・助成率 補助上限 卸売業での使いどころ
持続化補助金 2/3(賃金引上げ特例を使う赤字事業者は3/4) 50万円(特例で最大250万円) 販路開拓(従業員5人以下のみ)
デジタル化・AI導入補助金(通常枠) 1/2以内(条件付きで2/3以内) 5万〜450万円 受発注・在庫管理などの登録ITツール
省力化投資補助金(カタログ注文型) 1/2以下 従業員数別500万〜1,000万円(大幅な賃上げで750万〜1,500万円) AGV/AMRなどの登録製品
省力化投資補助金(一般型) 中小企業1/2・小規模事業者2/3(中小企業も特例で2/3) 従業員数別750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例で1,000万円〜1億円) カタログにない物流設備・システム
新事業進出・ものづくり補助金 1/2〜2/3(枠・規模による) 750万〜7,000万円(賃上げ特例で850万〜9,000万円) 新サービスの開発・新市場への進出
キャリアアップ助成金 定額 中小企業・有期雇用から1人40万円(重点支援対象者80万円) 有期雇用の従業員の正社員化

2. 卸売業の従業員数要件

持続化補助金の「小規模事業者」は、業種によって従業員数の基準が違います(第20回 公募要領。役員・同居の親族は数えません)。

業種 常時使用する従業員数
商業・サービス業(卸売業・小売業を含み、宿泊業・娯楽業を除く) 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

5人を超える卸売業は、持続化補助金の対象外です。

一方、中小企業基本法第2条の「中小企業者」は、卸売業では資本金1億円以下の会社、または常時使用する従業員100人以下の会社・個人です(どちらか一方を満たせばよい)。補助金ごとの定義は、各制度の公募要領で確認してください。

3. 販路開拓で持続化補助金(5人以下のみ)

持続化補助金の対象経費は、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンライン含む)、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費の8区分です。卸売業の販路開拓では、次のような使い方が考えられます。

展示会への出展

展示会等出展費(オンライン含む)の区分で検討します。出展でどのような商談・成約を見込むのかを、計画書で具体的に示してください。

新規取引先向けの販促物

商品カタログやチラシなどの販促物は、広報費の区分で検討します。広報費は補助金額30万円(税込)が上限で、広報費だけでの申請はできません

BtoBの受発注サイト

ウェブサイト関連費(第20回は補助金額30万円(税込)まで・単独申請不可)の区分で検討します。個々の経費が対象になるかは、公募要領と商工会・商工会議所で確認してください。

4. 物流の省力化で省力化投資補助金

カタログ注文型

事務局に登録された製品から選び、販売事業者と共同で申請します(随時受付)。登録カテゴリには自動搬送(AGV/AMR)などがあります。対象は登録製品だけなので、公式の製品カタログで型番まで確認してください。

一般型(オーダーメイド型)

自動倉庫や仕分け設備など、カタログにない自社専用の設備・システムを入れる場合の類型です。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1つ以上導入することや、労働生産性の年平均成長率+4.0%以上などの要件があります。第8回の申請受付は2026年9月18日10:00〜10月16日17:00です。

新事業進出・ものづくり補助金との違い

新事業進出・ものづくり補助金の革新的新製品・サービス枠は、既存事業の生産プロセスの改善だけの事業や、機械装置を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わない事業を対象外としています。新事業進出枠は、製品等と市場の両方が自社にとって新しいことが条件です。物流の効率化だけが目的なら、省力化投資補助金を先に検討してください。

5. デジタル化・AI導入補助金で受発注・在庫管理

受発注・在庫管理のIT化は、卸売業の業務効率化で効果が出やすい領域です。

対象になるもの

補助の対象は、事務局に登録されたITツールだけです。個別のサービスが登録されているかは、公式の「ITツール検索」で確認してください。

  • 通常枠のソフトウェアは、公募要領の業務プロセス(供給・在庫・物流、決済・債権債務・資金回収、会計・財務・経営など)を1つ以上持つ必要があります
  • インボイス枠(電子取引類型)は、取引先に利用させる受発注のクラウドサービスが対象です(中小企業・小規模事業者等は補助率2/3以内、350万円まで)

注意点

  • IT導入支援事業者と共同で、支援事業者から招待された申請マイページで申請します
  • 交付決定前に契約・発注したITツールは対象外です
  • 補助金は実績報告を経て補助金額が確定してから支払われるため、導入費用はいったん全額を支払います
  • 通常枠で150万円以上を申請する場合は、給与支給総額の年平均成長率3%以上などの賃上げ計画が必要です

6. 卸売業特有の落とし穴

落とし穴1: 商品の仕入れは対象経費にない

持続化補助金の8つの経費区分にも、省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金の対象経費にも、「販売する商品の仕入れ」という区分はありません。在庫を増やすための資金は、補助金ではなく運転資金として考えてください。

落とし穴2: 既存取引先への営業強化だけの計画

持続化補助金は、販路開拓や業務効率化の取組を支援する制度です。既存の取引先への追加提案だけでは、計画の説得力が弱くなりがちです。新しい顧客層や地域に向けた取組として計画を組み立ててください。

落とし穴3: 配送車両は対象にしにくい

持続化補助金では、車両など汎用性が高いものは対象外です。他の制度で車両を検討する場合も、それぞれの公募要領の対象経費で確認してください。

落とし穴4: 利益構造の説明が足りない

卸売業の計画書では、仕入価格・卸売価格・利益率などの前提を示さないと、投資でどれだけ付加価値が増えるのかが伝わりません。新事業進出・ものづくり補助金や省力化投資補助金の一般型は、付加価値額や労働生産性の伸びが要件です。

落とし穴5: 受発注サイトを作るだけの計画

ウェブサイト関連費は補助金額30万円(税込)が上限で、単独では申請できません。展示会や営業活動など、ほかの販路開拓の取組と組み合わせた計画にする必要があります。

7. 卸売業の制度選び方

常時使用する従業員5人以下

  • 販路開拓(展示会・販促物・ウェブサイト) → 持続化補助金
  • 有期雇用の従業員の正社員化 → キャリアアップ助成金

6人以上

  • 受発注・在庫管理のIT化 → デジタル化・AI導入補助金
  • 最低賃金に近い賃金の引上げ+設備投資 → 業務改善助成金
  • 物流の省力化 → 省力化投資補助金(登録製品はカタログ注文型、オーダーメイドは一般型)

新サービスの開発・新市場への進出を伴う大型投資

  • 新事業進出・ものづくり補助金(補助下限は革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠750万円)

8. 申請を勧めるケース

  • 新しい顧客層・地域への販路開拓の計画がある
  • 物流や受発注のどこに手間がかかっているかを数字で示せる
  • 使いたいITツールが登録ITツールにある
  • 交付決定まで発注・契約を待てる
  • 導入費用をいったん全額立て替えられる

9. 申請を勧めないケース

  • 既存取引先への営業強化だけが目的
  • 商品の仕入れ資金に充てたい
  • 配送車両だけが必要
  • 1〜3か月以内に導入を終えたい
  • 採択後の実績報告や効果報告に対応する体制がない

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10. よくある質問

Q. 卸売業の小規模事業者の基準は?

A. 持続化補助金では、常時使用する従業員5人以下です(役員・同居の親族は数えません)。製造業その他(20人以下)より厳しい基準です。

Q. 6人以上になったら持続化補助金は使えませんか?

A. 小規模事業者に当たらないため、持続化補助金は対象外です。デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、業務改善助成金などを検討してください。

Q. 配送ドライバーの人件費は補助されますか?

A. 持続化補助金・省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金の対象経費に、自社の人件費はありません。持続化補助金には委託・外注費の区分がありますが、対象になるかは公募要領で確認してください。

Q. 受発注システムを取引先にも使ってもらう場合は?

A. デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)は、取引先に利用させる受発注のクラウドサービスが対象です。中小企業・小規模事業者等は補助率2/3以内、350万円までです。

11. 情報源


最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部

この記事を書いた人

補助金・助成金リアリティ編集部

中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。

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