結論
事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&A(事業再編・事業統合)に伴う設備投資、専門家費用、統合作業、廃業の費用を補助する制度です(事業承継・M&A補助金 16次公募要領 Ver.1.0 2026年9月で確認)。
- 16次公募の申請受付は2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00(全枠共通)。申請はJグランツで、GビズIDプライムが必要です
- 補助上限は枠・類型により150万〜2,000万円。最大の2,000万円は専門家活用枠の「買い手支援類型 100億企業特例」で、特例を除く最大は1,000万円(事業承継促進枠・PMI推進枠の事業統合投資類型で賃上げ要件を満たした場合)です
- 認定経営革新等支援機関の確認書が必要なのは、事業承継促進枠と廃業・再チャレンジ枠です
- 専門家活用枠は、補助事業期間内にクロージングしないと上限が300万円(小規模売り手支援類型は50万円)に下がります
- 補助事業期間は2027年1月(下旬予定)から14か月以内が想定され、契約・発注は交付決定日以降かつ補助事業期間内のものだけが対象です
- 公式発表の件数では、15次は551件中338件(61.3%)、14次は512件中311件(60.7%)が採択されました
1. 事業承継・M&A補助金の基本スペック(16次公募)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 中小企業庁 |
| 枠 | 事業承継促進枠/専門家活用枠/PMI推進枠/廃業・再チャレンジ枠 |
| 補助率 | 1/2〜2/3(100億企業特例は1,000万円を超える部分が1/3) |
| 補助上限 | 150万〜2,000万円(枠・類型による。廃業費を併用すると最大300万円を上乗せ) |
| 対象 | 中小企業者等(枠・類型ごとに要件あり) |
| 申請受付 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00(公募要領の開示は2026年9月4日) |
| 申請方法 | Jグランツ(GビズIDプライムが必要) |
| 認定支援機関の確認書 | 事業承継促進枠・廃業・再チャレンジ枠で必要 |
| 補助事業期間 | 2027年1月(下旬予定)から14か月以内を想定 |
| 採択 | 15次 551件中338件(61.3%)/14次 512件中311件(60.7%)。公式発表の件数から算出 |
| 支払 | 補助事業期間の終了後、実績報告と確定検査を経てから |
2. 枠・類型ごとの補助上限と補助率
| 枠・類型 | 補助率 | 補助下限 | 補助上限 | 廃業費の併用 |
|---|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 小規模事業者等2/3、それ以外1/2 | 100万円 | 800万円(賃上げ要件を満たせば1,000万円。800万円を超える部分は1/2) | +300万円 |
| 専門家活用枠 買い手支援類型(Ⅰ型) | 2/3 | 50万円 | 600万円+DDを行う場合200万円=800万円 | +300万円 |
| 専門家活用枠 売り手支援類型(Ⅱ型) | 1/2(営業利益率の低下または赤字なら2/3) | 50万円 | 600万円+DDを行う場合200万円=800万円 | +300万円 |
| 専門家活用枠 買い手支援類型 100億企業特例 | 1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円を超え2,000万円までの部分は1/3 | 50万円 | 2,000万円 | +300万円(1/2) |
| 専門家活用枠 小規模売り手支援類型 | 2/3 | なし | 450万円 | +150万円 |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | 1/2 | 50万円 | 150万円 | +300万円(単独申請の場合) |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 小規模事業者等2/3、それ以外1/2 | 100万円 | 800万円(賃上げ要件を満たせば1,000万円) | +300万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 再チャレンジ申請(単独)2/3、併用申請は併用する枠の補助率 | 50万円 | 300万円 | - |
※ 小規模事業者等は、製造業その他は従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業は20人以下の会社・個人事業主です(公募要領)。
3. 事業承継促進枠
これから事業承継を行う会社のための枠です。同一法人(事業)の中で親族または従業員へ代表者を交代する予定があり、その承継予定者を中心に行う生産性向上等の取組(設備投資など)を補助します。「承継を終えた会社」向けと誤解されやすいので注意してください。
16次公募の主な要件
- 公募申請期日(2026年11月6日)から5年後の2031年11月5日までに承継を完了する予定で、その蓋然性について認定経営革新等支援機関の確認を受けた計画書であること
- 承継予定者は、対象会社の役員・従業員として(通算で)3年以上の経験がある者、または対象会社の代表経験がない被承継者の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)
- 公募申請時点で、対象会社が3期分の決算・申告を終えていること(個人事業主は、開業届と青色申告承認申請書の提出から5年が経過していること)
- 経営権と所有権(株式・持分等)の両方が被承継者から承継者へ移ること。承継後に複数代表になる場合は対象外
- 期限までに承継が完了しなければ、補助金は返還(事業者の責めに帰さない事由を除く)
実質的な事業承継とみなされない例(原則として対象外)
- 経営権と所有権のどちらも移らない代表者交代
- グループ内の事業再編
- 物品・不動産等だけを保有する事業の承継
- フランチャイズ契約(実質的にそうみなされる場合を含む)、従業員等へののれん分け
- 休眠会社など、事業の実態がない会社での代表者交代
対象経費(事業費の区分)
- 設備費(国内の店舗・事務所等の工事、国内で使う機械器具等の調達。品目1件20万円以上(税抜)の設備のみ)
- 産業財産権等関連経費
- 謝金(専門家等)
- 旅費(販路開拓等の出張)
- 外注費
- 委託費
※ 被承継者に支払う譲受費用(土地・資産の購入費用等)や、売上原価に相当する経費は対象外。
加算
- 賃上げ要件(基準年度の翌年度に、従業員1人当たり給与支給総額を3%以上引き上げる)を満たすと、上限が800万円→1,000万円(800万円を超える部分の補助率は1/2。達成できなければ引上げ額(最大200万円)を返還)
- 廃業費の併用で+300万円
4. 専門家活用枠
M&A(事業再編・事業統合)に伴う専門家費用などを補助する枠です。親族内の事業承継やグループ内の事業再編は対象外です。
4つの類型
| 類型 | 使う人 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 買い手支援類型(Ⅰ型) | 株式・経営資源を譲り受ける側 | 600万円(DDを行えば800万円) |
| 売り手支援類型(Ⅱ型) | 株式・経営資源を譲り渡す側 | 600万円(DDを行えば800万円) |
| 買い手支援類型 100億企業特例 | 売上高100億円を目指す譲り受け側(追加要件あり) | 2,000万円 |
| 小規模売り手支援類型(15次から新設) | 株式・経営資源を譲り渡す予定の小規模事業者等 | 450万円 |
対象経費
- 公募要領の区分は、謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料
- 委託費のうち、FA・仲介業務の相談料・着手金・中間報酬・成功報酬などは、M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者が支援したものだけが対象(登録の確認は交付決定時)
- M&Aマッチングサイトの登録料・利用料・成約手数料は「システム利用料」に区分
- 保険料は、最終契約の表明保証条項の違反による損害などを補償する表明保証保険の保険料(買い手支援類型は買い手が手配した保険、売り手支援類型は売り手が手配した保険。原則2者以上から見積もり)
- 廃業費(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費用)も併用できる
注意点
- 対象になるM&Aは、補助事業期間内に相手方と基本合意書または最終契約書を締結する予定のもの。申請時点で契約済みである必要はない
- 仲介・FAの中間報酬は基本合意書、成功報酬は最終契約書を、それぞれ補助事業期間内に締結・支払ったものが対象。補助事業期間の開始前に最終契約を結んでいながら、覚書などで最終契約日を期間内にずらす行為は、原則として期間内の最終契約とみなされない
- 期間内にクロージングまで至らなければ、上限は買い手・売り手支援類型で300万円(原則としてDD費用のみ対象)、小規模売り手支援類型で50万円に下がる
100億企業特例の主な追加要件
- 公募申請時に、自社の「100億宣言」が100億企業成長ポータルで公表されていること
- 被承継者に支払う最低譲渡価額が5億円以上であること
- 承継者と被承継者のシナジー(水平型・垂直型・集中型のいずれか)が見込まれ、譲受け後に地域経済を牽引する事業を行う見込みがあること
- 補助対象経費に計上するかどうかにかかわらず、DDを実施すること
- 被承継者の従業員の雇用を3年間維持すること(承継者の責によらない場合を除く)
- 不採択になっても通常の専門家活用枠(上限800万円)には移行せず、同じ公募回で通常の専門家活用枠と同時に申請することもできない
5. PMI推進枠
M&A後の経営統合(PMI)を支援する枠です。
2類型
- PMI専門家活用類型: PMIの専門家への委託などの費用。補助率1/2、下限50万円・上限150万円
- 事業統合投資類型: 統合に伴う設備投資など。補助率は小規模事業者等2/3・それ以外1/2、下限100万円・上限800万円(賃上げ要件を満たせば1,000万円)
6. 廃業・再チャレンジ枠
上限300万円・下限50万円です。交付申請時に補助額が下限を下回る申請(補助対象経費75万円未満)は受け付けられません。使い方は2通りです。
- 併用申請: 事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠と併せて、既存事業や譲り受けた事業の一部などを廃業する(補助率は併用する枠に従う)
- 再チャレンジ申請(単独): M&Aで事業を譲り渡せなかった中小企業者が廃業し、新たな活動に取り組む。廃業する予定の対象会社と、議決権の過半数を持つ支配株主または株主代表が共同で申請する(個人事業主は本人が申請)。補助率2/3
対象経費(廃業費の区分)
- 廃業支援費(廃業登記の手続きを司法書士に依頼する費用など)
- 在庫廃棄費
- 解体費(建物・設備等)
- 原状回復費
- リースの解約費
- 土壌汚染調査費
- 移転・移設費
7. 採択を左右するポイント
ポイント1: 枠に応じた確認書・登録の準備
事業承継促進枠と廃業・再チャレンジ枠は、認定経営革新等支援機関の確認書が必要です。公募要領は、申請締切の直前に確認を依頼しても間に合わない場合があると注意しています。専門家活用枠でFA・仲介費用を計上するなら、M&A支援機関登録制度の登録業者を使います。
ポイント2: 承継の具体性
事業承継促進枠は、5年以内に承継を完了する蓋然性が審査の前提です。承継予定者が要件(役員・従業員として3年以上、または代表経験のない親族)を満たし、株式等の移転まで含めた承継の段取りが、認定支援機関の確認に耐える形で固まっている必要があります。
ポイント3: GビズIDプライムを先に取る
申請はJグランツで、GビズIDプライムが必要です。公募要領は、アカウントの発行に1〜2週間程度(混雑時は3週間程度)かかるとしています。GビズIDの案内では、マイナンバーカードとGビズIDアプリによるオンライン申請は最短即日、書類郵送は最大1か月です。2026年7月9日からGビズIDプライムに有効期限(2年3か月)が設けられたので、取得済みのアカウントも期限を確認してください。
ポイント4: 再チャレンジの中身
再チャレンジ申請では、支配株主・株主代表または個人事業主が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たな活動に取り組むことが要件です。廃業の段取りと合わせて、廃業後に何をするかを具体的に示します。
8. 落とし穴
落とし穴1: 確認書の依頼が締切に間に合わない
事業承継促進枠は、承継の蓋然性について認定経営革新等支援機関の確認を受けた計画書が前提です。公募要領は、締切の直前では確認が間に合わない場合があると明記しています。16次の締切(2026年11月6日17:00)から逆算して、早めに依頼してください。
落とし穴2: 承継を「終えた後」に促進枠を狙う
事業承継促進枠は、承継を予定している会社が対象です。代表交代や株式の移転を先に済ませてから申請しようとすると、枠の前提から外れます。逆に、申請後に承継が期限(16次は2031年11月5日)までに完了しなければ補助金の返還対象です。
落とし穴3: クロージングしない前提で専門家活用枠を使う
専門家活用枠は、申請時点でM&Aが成立している必要はありません。ただし補助事業期間内にクロージングまで至らないと、上限が300万円(小規模売り手支援類型は50万円)に下がり、買い手・売り手支援類型では原則DD費用しか補助されません。成約の見込みが薄い段階で仲介の成功報酬まで当て込むのは危険です。
落とし穴4: 100億企業特例を「上限が高い通常枠」と考える
100億企業特例には、100億宣言の公表、最低譲渡価額5億円以上、DDの実施、従業員の雇用の3年維持などの追加要件があり、1,000万円を超える部分の補助率は1/3です。不採択でも通常の専門家活用枠には移行せず、同じ回で両方に申請することもできません。
落とし穴5: 親族内承継と第三者承継を混同する
親族内承継・従業員承継は事業承継促進枠、第三者承継(M&A)は専門家活用枠・PMI推進枠。専門家活用枠は親族内の承継を対象外としているので、混同すると枠選びから誤ります。
落とし穴6: 賃上げで上限を上げて未達になる
事業承継促進枠・事業統合投資類型で上限を1,000万円に上げた場合、基準年度の翌年度に従業員1人当たり給与支給総額を3%以上引き上げられないと、引上げ額(最大200万円)を返還します。
9. 申請を勧めるケース
- 5年以内に親族・従業員への承継を予定し、承継予定者が決まっている(事業承継促進枠)
- M&Aの相手探し・交渉を補助事業期間中に進め、基本合意・最終契約まで見込める(専門家活用枠)
- 締切までに認定経営革新等支援機関の確認書を受けられる(事業承継促進枠・廃業・再チャレンジ枠)
- GビズIDプライムを取得済み、または申請までに取得できる
- 補助事業期間中の支払いを、補助金の入金まで自己資金などで賄える
10. 申請を勧めないケース
- 承継準備が始まっていない(後継者未定)
- M&Aの相手探しや交渉を始める見込みが立っていない
- 事業承継促進枠・廃業・再チャレンジ枠で、締切までに認定支援機関の確認書を受けられない
- 承継をすでに終えていて、促進枠の対象になると思っている
- 数か月以内にM&Aを完了したい(16次の補助事業期間は2027年1月下旬予定の開始で、それより前の契約・支払は対象外)
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11. よくある質問
Q. 最大いくらまで補助されますか?
A. 最大は、専門家活用枠 買い手支援類型の100億企業特例で2,000万円です(廃業費を併用すると別に300万円まで)。特例を除く最大は、事業承継促進枠またはPMI推進枠の事業統合投資類型で賃上げ要件を満たした場合の1,000万円です。
Q. 16次の申請はいつからいつまでですか?
A. 2026年10月2日(金)から11月6日(金)17:00までで、全枠共通です。申請はJグランツで行い、GビズIDプライムが必要です。
Q. 個人事業主の事業承継も対象?
A. 対象です。事業承継促進枠では、開業届と青色申告承認申請書の提出から5年が経過していることなどが要件です。
Q. 承継が終わった会社は事業承継促進枠に申請できる?
A. 促進枠は、公募申請期日から5年以内に親族・従業員へ承継する予定の会社が対象です。承継後の会社を想定した枠ではないため、最新の公募要領で自社の状況が要件に当てはまるか確認してください。
Q. M&Aの相手が決まる前でも専門家活用枠に申請できる?
A. できます。対象は、補助事業期間内に基本合意書か最終契約書を締結する予定のM&Aです。ただし期間内にクロージングしなければ、上限が300万円(小規模売り手支援類型は50万円)に下がり、買い手・売り手支援類型では原則DD費用のみになります。
Q. 認定経営革新等支援機関の確認書はどの枠で必要ですか?
A. 事業承継促進枠と廃業・再チャレンジ枠です。事業承継促進枠では、承継の蓋然性について確認を受けた計画書であることが要件になっています。専門家活用枠とPMI推進枠の公募要領には、確認書を提出する要件はありません。
Q. 採択率はどのくらいですか?
A. 公式サイトの発表では、15次は申請551件・採択338件(2026年9月11日発表。算出すると61.3%)、14次は申請512件・採択311件(2026年5月15日発表。60.7%)です。
Q. 廃業・再チャレンジ枠は誰が再チャレンジする?
A. 再チャレンジ申請(単独)では、M&Aで事業を譲り渡せなかった会社の支配株主・株主代表、または個人事業主が、地域の新たな需要や雇用を生む新たな活動に取り組みます。他の枠と併せる併用申請は、承継やM&Aに伴って事業の一部などを廃業するケースです。
12. 情報源
- 事業承継・M&A補助金 公式
- 事業承継・M&A補助金 16次公募(公募要領・お知らせ・採択件数)
- 16次公募要領 事業承継促進枠(PDF)
- 16次公募要領 専門家活用枠 買い手支援類型・売り手支援類型(PDF)
- 16次公募要領 専門家活用枠 買い手支援類型 100億企業特例(PDF)
- 16次公募要領 専門家活用枠 小規模売り手支援類型(PDF)
- 16次公募要領 PMI推進枠 PMI専門家活用類型(PDF)
- 16次公募要領 PMI推進枠 事業統合投資類型(PDF)
- 16次公募要領 廃業・再チャレンジ枠(PDF)
- M&A支援機関登録制度
- 100億企業成長ポータル
- GビズID アカウントの有効期限
- 中小企業庁 認定経営革新等支援機関
最終確認日: 2026年9月15日 / 編集: 補助金・助成金リアリティ編集部
この記事を書いた人
中小企業庁・厚生労働省・各都道府県の公式公表内容を一次情報源に、補助金・助成金の「申請すべきか/見送るべきか」を中立的に伝えるための編集チーム。 採択保証表現や申請代行業者の宣伝は行わず、採択率・準備負担・立替期間・実績報告の負荷といった現実的な観点から判断材料を提供することを編集方針としています。
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